2025/03/09

2025/3/9 演劇WS「カメレオンのみつけかた」 ‐第2週 お話を探そう ― ②

★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』第2週 お話を探そう ― ②

日時:2025/3/9(日)13:30~16:30
会場:茅野市民館 アトリエ
講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司
参加者:19名
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●今日はジェスチャーゲームからスタート

昨日のワークショップから講師は変わらずで、早速ワークショップがスタート。
じゃんけんで勝った人/負けた人の2つに分かれて、2チーム対抗でのジェスチャーゲームです。

(奥側がチーム青春、手前側はチームサンキュー)

ジェスチャーをする人は声を出したり文字を書こうとしたりはNGで、お題をジェスチャーでチームの人に伝え、そこからお題を当てる早さを競います。

 ・細川さんから、ジェスチャーする人にお題を伝えます。

 →ジェスチャーする人は、自分のチームに戻ってジェスチャー。チーム全員で、何を表しているかを当てていきます。

 →チームの誰かがお題を当てられたら、ジェスチャーをしている人が「正解」と教えて、チーム全員で挙手。

 
(ちなみに今回も、厳正なジャッジは五味隊長✨)

まずは練習問題から、お題は「動物」で出されます。正解はクロサイやコウテイペンギンなど…思ったよりお題が難解でした💦


本戦に入る前に、チームごとに作戦会議をしました。
本戦最初のお題は「食べもの」シリーズ。

(両チームにアドバイスをする武居さん)

(ジェスチャーをよく見ようと、皆が段々近づいて、気がつけば前のめり状態に)

お題:「食べもの」シリーズではチンジャオロース・ちゃんこ鍋など5問が出題、チーム青春が優勢でした。
もう一度作戦会議を挟んで、次の5問のお題は「映画のタイトル」シリーズ。映画は、人によって見たことのあるないも様々で、ジェスチャーをする人が、その映画を知らないこともあります。タイトルのイメージからジェスチャーしたり、映画の内容をジェスチャーしたり、分からないなりにジェスチャーをしてみる・当ててみるでトライ。

(ジェスチャーをする2人にこんな年の差も!
ちなみにこの時のお題は「ローマの休日」。どのように伝える?)

(映画を知らないので、タイトルの「休日」からジェスチャー?)

(映画を見たことがあるので、内容をジェスチャー。アン王女や手紙をジェスチャーしたり、写真は、真実の口に手を入れる占いのジェスチャー)

お題:「映画」シリーズは、チームサンキューが優勢。
また作戦会議を挟み、最後はお題:「人物」のシリーズで5戦します。存命の人物か故人か、日本の人か海外の人か、だけでも幅広くなり、ジェスチャーの切り口もますます広がります。
性別?職業?名前?お題の人物が誰なのかさっぱり分からない! ジェスチャーをする人も当てる側も難儀して、両チームなかなか正解が出ず、長時間ジェスチャーを続ける問題も出てきました。
チームの中でも、ジェスチャーが上手い人やインスピレーションが早い人がそれぞれ分かってきたり、珍プレー好プレーも出つつ、これまでのワークショップでやってきた「伝えようとする」「よく見ようとする」姿勢で、集中してワークに取り組めた感じがしました。

●休憩の間に…

昨日、「名詞」を3つ考えてくる、という宿題が出ていました。
休憩の間に、メモ用紙1枚に1名詞ずつ書き、見えないように四つ折りにして、箱に入れておきます。何を書いたのかは、他の人には秘密です。

●3つの名詞を入れながら、話をしてみる

箱の中から名詞を3枚を引いて、そこに書かれている3つの単語を入れながら、話を作っていきます。
ちなみに紙の中身は、「徳島」「渋谷」といった地名から、「猫」「駅」「トンネル」など一般的なもの、「レムリア文明」「ジャンバラヤ」など聞きなじみのあまりない単語まで、幅が広い!


引いた単語を見て、とりあえず話を始める。話をしている内に、口から出ちゃった言葉はそのままに、その場に身を任せて話を続けてみる。
聞いている人は、話を聞きながら何の単語を引いたのか考えてみたり、話の中で印象に残った部分を見つけてメモしておきます。


すらすらと話される方がいたり、引いた単語に悩みつつ、探り探りの口調で奇想天外の話をし始める方もいたり。
話の流れがよく分からない(たぶん話している本人も、話がどうなっていくのか分からずに話している)でも、話がどうなる?次はどう展開していく?と段々前のめりになって、口から出て来る次のワードを楽しみにしながら、話を聞いていました。


「山で一人でジンギスカンをしていたらオスカル様が通りすぎた」、
「ピータン…ピーマン?(「ピータン」の紙を引いたけれどそれが何なのか分からず、普段なら出ないような言い間違えが咄嗟に出てきたよう!)」、「高い猫が好き」、「猫を踊らせようと思って、ミシンでドレスを作る」「ラインスト―ンのついた綺麗な傘は雨の日には使えなかった」
…話の全体の流れも、話の中で不意に出てくる言葉も、面白い。

途中からは、話をする人に設定が加わってきました。
「怖い話をします…から話し始める(シーラカンス展に行こうと電車で出かける…話)」、「桃太郎のような、皆が知っているような昔話をするように話す(光る鹿から一晩中目が離せなかったおじいさんの話でした)」、「ドライブデートの車内で、ロマンチックに話をする」など…

(遅刻してきた生徒に対して、写真右側の先生が遅刻の理由を聞くと、
嘘みたいな話をし続ける、という設定)

話している本人は真剣、でも話の内容が設定とズレていたり、みんな大笑いでメモするどころじゃなくなりました。

●最後に、感想タイム

何人かが話す人をやってみた後に全体で、話を聞いて思ったことや、話の中で面白かった部分など、感想を共有。武居さんや細川さんも交えて、話を聞いていて感じたことを話していきました。


・「人力車が飛ぶわけがない」など、机に向かって脚本を書いているやり方だと出なさそうな言葉が話の中で出て来る、こういうふうにポロっと出て来る言葉が面白い。
・猫の話で思い出した。知合いの家から2匹のうち1匹の猫をもらったが、自分のもらった猫の方がシャム猫とわかった後、取り替えてくれと言われた。でももう猫を可愛く思ってたから、取り替えには応じなかった。
・この話は何の3つの単語を引いていたの?
・遠く旅行に行ったときに、「朝は家にいたのに、今はここにいるのが変な感じ」の感覚は分かる気がする。
・「面白い話なんだけど…」と言って始まったけれど、神社の階段の途中でワニのぬいぐるみが落ちていた…と続いていった、そんなシチュエーションだと怖い話になりそう。
・犬は噛むけれど猫はそんなに噛まないから猫の方がいいかな…と言ってたけれど、猫も噛むよ~。

…というような、話の聞き方もそれぞれな感想が出てきていました。
いろんな人の“面白がる視点”を自分ももらって、もっと面白く話を聞けそう!な気持ちになりました。

ここで、今週のワークショップは終了。いよいよ来週が最後の週になります!


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\カメレオンのうらばなし/

第2週「お話を探そう」その2。
講師の武居さん、細川さんとの振り返りを、
活動を見守るサポートCの五味さん、
参加者でブログ担当スタッフの山内さんとともに、
語り合いました。



――さっそく、引きあてた3つの言葉でお話をする場面の話を聞きたいのですが、実際にやってみてどうでしたか?

山内 やりながら「3つ、入れなきゃ」って頭の片隅にあるんですけど、話していくうちに、それとは別に「あ、こういう方向にしゃべりだしちゃう」ってなって。わたしが引いたのは「駅」と「トンネル」と「大都会のスタバ」だったから、割と「行き道」の話だなーって。でも、行き道の話で単語3つを入れたら簡潔に終わるっていう感じじゃなくて、しゃべっているうちに話が横道にそれて、「違う違う、お題があったんだ」って思い出したり。話しながら、横道にそれながら、うねうね曲がりながら話しているような感覚があって、ちょっと緊張しました。

――構成などを考えずに、パッと出たものから話しはじめるというのは……

武居 もう、それが肝(きも)ですね。

細川 これを一番はじめにやったのは、俳優だけでお芝居をつくろうっていうときなんです。劇作家がいるっていうのではない方法で、俳優がその場でしゃべったことを俳優が聞くと、お芝居ができるんじゃないかって模索していて。落語の三題噺からとったんですけど、落語じゃないから落とさなくていいよっていうルールで。
これって、話さなきゃいけないことがあるから、話すんですよね。なんでもいいからって言われるより、この3つの言葉をばれないように入れて、話してくださいっていう。で、大抵そのワード自体はテーマにならない。たとえば「大都会のスタバではしゃぐ」の「はしゃぐ」のところ、そこがおもしろいですよね。そういう横道のところ、曲がったところを拾っていく。

武居 その言葉にいくための過程がおもしろい。そこにいくために口火を切って話し出す、その部分がおもしろかったり、単語から単語にいくための変なストーリーが、なんかおもしろい……ってなることが多いですね。
ぼくら役者の集団だと同じような生活をしているから、出てくるものがそんなに新鮮じゃなかったり、ドキッとしなかったりするんですけど、今日参加しているみなさんはそれぞれ人生が違うし、生活も違うから、出てくるものの多様性がほんとすごくて、魅力的。役者じゃ出てこない話、感覚だなってすごく驚きました。

――話を聞いて、おもしろいところがあったらメモしてっていうのも、また見方、聞き方が違ってきますよね。みなさんが拾って書いたメモも読んでみたいって思いました。

武居 確かに。絶対ぼくらと違うところをおもしろいと思っているでしょうね。

山内 話を聞いていて、「シーラカンス」とか「なんとか文明」とか、日常ではそんなに使わない単語を入れて、探り探り話している感じとか、「高いねこが好き」みたいに、本人はそうじゃないだろうけれど、ほんとうにそれが存在しているみたいにリアルに感じられたのも、おもしろかったです。

武居 大きな勘違いもおもしろいですからね。以前、ヘミングウェイが浜辺でしゃべるシーンをやっていて、なぜか女性だと思っちゃって「わたしはヘミングウェイよ」って(笑)。勘違いしている人なのか、ヘミングウェイって思い込んでる女性なのか、わけのわからないシーンになって、こっちは真剣にやってるんだけど、みんなゲラゲラ笑ってて(笑)。

細川 それこそ、劇作家が書くわけない話。そういうところから発想する、という。
こういったワークを高校生なんかとやるとき、まずは「わるいお客さん」「いいお客さん」を演じてみるっていうのを先にやるんです。そうすると、いいお客さんってどんなふうか想像できるようになっているから、お話をするところ、要はつまらない話なんだけど、それを楽しむことができる。「楽しませてよ」じゃなくて「楽しむ」状態をつくるんですけど、今日はそれをやらなくていいなって。けっこうみなさん前のめりで。

武居 ここに来るところから楽しみにしているっていうか。拾おう拾おうって。
すごく引いて見てみると、聞いている人たちがすでに演じているじゃないですか、これ。嘘の話をほんとのように聞いているっていう参加を、もう演じてるんですよ。「嘘だってわかってるけどあなたにとってのほんとの話として聞きましょう」って。「はあ?」ってならないで「ほうほう、それで」っていう合いの手になる。もう演劇ゲームに参加しているんで。

五味 先週や昨日のことがなくて、「3つのワードを入れて話して」って言われても、今日みたいにはならないですよね。

武居 そうですね。初日にほんとの自分の話をして、それを人に渡したときにもうすでに自分にとっては嘘なんだけど、でも、人にとってはほんとの話。1週目で、ほんとと嘘の境い目を徐々に崩していきつつ、2週目はそういったこだわりはもうよくて、起こっていることを楽しむっていう。そこに入っていけたのかなって気はしますね。

――昨日、人と人の間にうまれるものを見ているっておっしゃっていましたけど、お話に入っていく感じがありましたね。はっ!と気づいたり、え?って思ったり、ある意味能動的に気づくようになっていく感じもありました。

武居 そういう、ある意味一番いい状態でぼくがお芝居を見ているときは、リアリティがあるかどうかっていうより、たとえ嘘の表現だったとしても「この部分おもしろい!」「その感覚わかる!」ってとらえる自分になっていて、見たときの感動がすごいんです。ちょっとわからないとか、難しいなって思ったとしても、別のおもしろいところに脳が働く。だから、あの状態でお芝居を見たらもっと楽しいんじゃないかな。

細川 「もうわかんない」ってあきらめている人が客席にいると難しいんですよね。最初に「わかんない」って壁をどう崩したら伝わるか。だからお芝居ってオープニングをがんばるじゃないですか。

武居 その世界に入っていく、ね。本来、おもしろがりに来ているはずなんですけどね。

五味 日常生活のなかでも、今まで見過ごしてきたようなことも「おもしろい」って感じて、日々豊かになりそうですね。

武居 思い出した。ぼく、ついこの前までお芝居をやっていて、役者だけだったからまたちがう脳で一生懸命やっていたんですけど、帰ってきたら家の駐車場の横にあるちょっとした隙間に、うんちがあったんですよ、とても大きな……。「え!最悪!」ってもう嫌悪感でいっぱい。でも何日かして「ああ、おれの心いま豊かじゃないな」って。今のワークをやっているような状態で見つけていたら、もっといろんなことを想像したけど、そっちの脳がなくなっていた。だめだ戻さなきゃって思って、で、「どういうことだろうー!」ってぶわーっと広がりだして、ようやく「よし、もうカメレオンのみつけかた行ける!」って思って、来ました(一同笑)。