●まずは、ちょっとハードめな(?)準備運動
●前回からの続き、皆で話をしてみる・聞いてみる
●2人でちょっとお芝居、を見てみる
●最後に、荒井さん作の戯曲が登場!
\カメレオンのうらばなし/
第2週「お話を探そう」の1日目を振り返り、
講師の武居さん、細川さんにお話をうかがいました。
サポートCの五味さん(隊長!)、
ブログ担当スタッフの山内さん(参加者!)も参加して、
あれやこれやワイワイ語った「うらばなし」です。
――今日は、前半でほぐしていき、後半は「みんなの前でやってみる」ところに一気に進み、見ていてちょっと驚きました。
細川 距離が生まれる「さんづけ」の脳にならないように……とか、目を見る、触る、助け合いがうまれるっていうようなことをやって、あとは、前回いなかった方に改めて紹介をしがてら、次のステップまでいければいいな……というのが前半でした。
武居 驚いたのは、皆さんの話を聞いていると、先週聞いた話をそのまましているのかなっていうくらいナチュラルで、でも「全然ちがう」って。自分が失敗したり変になっちゃってもいいっていうふうに、これまでの時間でなっているんだなって感じました。だから、席の位置はみんなの前になったけど、さっき話したのとあんまり変わらないっていう状態で、「あ、じゃあやりますかー!」みたいなね。ふつうだったら「やだやだ」とか「わたし指さないで」とか起きるんですけど、「お、腰軽いな」っていう(笑)。
五味 そう、それって茅野の、市民館の特色なんですよ(笑)。
――で、前に出てお芝居をしてみた時に……
五味 お二人(武居さん・細川さん)が時々、目配せされていたじゃないですか。あれはやっぱり抑えどころというか……
武居 言葉にするとむずかしいんですけど、いわゆる、演技をしている「風(ふう)」というか。そっちにスイッチが入っちゃうと、やっていることの根本の意味が変わってきちゃうので、そういうのはピッ…て(目配せ)……
細川 (目配せ)今、ちがうよねって。
武居 もう一回やってもらおうかって。悪いことじゃないんですけど、今回のワークに関しては、そうじゃないところから丁寧にスタートしているので。「こういうつくりかたをするなら」っていうこだわりの部分というか。
細川 それこそシェイクスピアの時代のお芝居とかをするなら、「感じて」っていうよりまず「大きい声でしゃべろうか」ってなる。だけど今は、みなさんの日常のなかにある、ちょっとした心の動き、エンジンみたいなもの、ピッて動いたものを、しっかり注意深く見ていればおもしろいから。これってたぶん大きい劇場では通じない。けど、みんなで共有した話を、この距離でやるからできるっていうのがあるよなあって思っていて。演技ってことを先にやろうとしちゃうと飛ばしちゃいそうになるんだけど、そしたらもったいない時間になっちゃうから、飛ばさせないっていうのは、やっていましたかね。
五味 丁寧に繰り返していくっていうのが、いいなって思いました。やり直ししなければそのままだったかもしれないけど、やってみるとその違いが見えるから。
武居 そっちのほうがわかりやすいですよね。やっているほうは「え、これでいいんですか?」っていうほうが多いと思うんですけど。
細川 なんだかわからないけど、見ている人に笑いが起きたり、おもしろかったって言われて、そうなんだ……っていう。成功体験というか。
武居 それが気づき。ぼくらも最初そうだったから。
――やっているときは渦中にいるのでよくわからないけど、見る側になったとき「あ、たしかに!」って感じられる。渦中にいた人は、そんな感じでしたか?(山内・うんうんうなずく)
あと、話している側ががんばるんじゃなくて、見たり聞いたりしている側のほうが大事っていうのは、ずっとおっしゃっていますよね。
細川 演技のワークをやるとき、みんな割としゃべり方を練習するんですよね。自分たちもそうだったけど、どうやったらおもしろくしゃべれるか、このワードをここにもってきたほうが受けるぞ、とか。でも果たしてそれか?…って最近思っていて。
武居 話をちゃんと伝えていくっていうお芝居もあるし、おもしろいんですけど、ここでのつくりかたでは、空気というか、人と人の間で行われている“これ(人との間に円を描きながら)”をもっと大事にしていったほうが演劇になっていくと思うんです。
細川 その“これ”を、大きい劇場なんかでもしっかりできると、おもしろいですよね。どうやって増幅させていくかっていうのはテクニックなんですけど。
武居 大きいホールだと、遠くにいる人も同じ体験をするために、そういう技術で増幅をしなきゃいけないだろうけど。
細川 演技は結果を見ているから、技術のほうだけ真似しちゃう人は、その結果を真似するんですけど、その手前が絶対にある。その過程をしっかり体験してもらおうというのが今回で。でも、俳優になるためのワークではないので、こうやっておもしろがることで、日常にちょっと彩りがうまれればいいな、というか。そうそう、前回帰りに、荒井が「すっごいおもしろかったね、全員の話!」って大喜びしていたんです。そういう感性があれば、いろんなところがお芝居にも劇場にもなるだろうし、その最初の一歩になればいいなって。
――そう、前回みなさんから聞いた話をもとに、荒井さんが3つの台本を書いてくださって、最後はその本読みでした。読んでいる方がもともと持っている部分が素直に出ていて、ちょっとジーンとしちゃうというか……
武居 特に年配の方々の、その長年生きてきた、味のあるしゃべり方。演技しようってなるとそういうのが全部なくなって、みんな同じような言い方になっちゃうんだけど、それを残したままの本読みってなかなか聞けないから、いいなあーって。
細川 そうなんですよ。ぼく、高知でやっている市民参加型演劇でいつもそれを感じていて、いつも打ちひしがれるんです。ぼくらは一か月半かけて「その人」をつくるんですけど、市民には「その人」がもういるんですよね。だからあとは演劇的なパス回しだけを教えて、うそをつかずに今やっていることをちょっと増幅させていくっていうのを心がけてつくっているんです。
武居 ぼくも高知の舞台に出演させていただいたんですけど、もうね、勝てないんで、全力で技術で勝負してやりました!(一同笑) 最初、本読みを聞いて「あー、すげえなー。もうその人たちいるなー」って。こっちはゼロからだし、土台がちがう。もうここは技術でいくしかない!って(笑)、でも勝てなかったですね。
細川 で、その人たちが技術に憧れて「武居さんすごいー」って(笑)。でも市民の方にもよく言うんですけど、みなさんの生きてきた経験からの、市民がやるお芝居って、もっともっとすごいんだよなって感じているんです。
武居 ぼくが今日聞いた話や見たものって正直、去年見たお芝居とかよりおもしろかった。たぶん、残るんですよ。だから、来週の発表が終わって、数年後に「あんとき見たあれ覚えてるな」「あれおもしろかったな」って残っていたら…っていうのが、一番の希望ですね。頭のなかで増幅しちゃっているんでしょうけど、でも、それにかなう演劇ってなかなか出会えなかったりするから。
――ランポンさんたちは、そういういろんなところをすごくよく見つけて、気づいているんだなって、荒井さんの本を見て思いました。
武居 ひとりの人が何か思いついてくれるのを待っているんじゃ、できあがらないつくりかたをしているので。稽古で「全然つまんねえな」って思ってたけど、ぽろっとだれかが言ったひとことに「それだ!」ってことがあるから。
細川 言い間違いから一本できたよね。
武居 最後の最後に間違えて(笑)、「あー見つけたー!」って。
細川 つまんないことのほうが多いんですよ。だから明日は、今日みたいにおもしろくないと思います(笑)。でも大切なのは、おもしろいことを言うことじゃなくて、おもしろがる心。おもしろいものをみんなが見つけようとすることが、演劇をつくるうえでは一番大事かな、と。つまらない日常も、ちょっとしたことで素敵に見える瞬間がある。お芝居で、その機微みたいなものをたくさん詰め込むことができれば、とてもいいなって思います。