2025/03/08

2025/3/8 演劇WS「カメレオンのみつけかた」 ‐第2週 お話を探そう ― ①

★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第2週 お話を探そう ― ①
日時:2025/3/8(土)13:30~16:30
会場:茅野市民館 アトリエ
講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司
参加者:18名
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今週の講師は、シアターランポンの武居さん・細川さん。
みんなで円に並んで座って、今回から初参加の方3名も含めて全員で呼び名の確認を手早く済ませた後、早速今週のワークショップがスタートしました。

(講師の武居さんも、今週からワークショップに参加✨)

●まずは、ちょっとハードめな(?)準備運動

最初のワークは頭を使う準備運動、全員で3つの“道”を作って、同時に動かしていく”ことをやってみました。

① 1つ目は、“名前の道”
自分の名前が呼ばれたら、次の人の名前を呼ぶというルールで、その順番を決めておきます。これが1つ目にできた“名前の道”。

(顔を合わせて、名前を呼んでいく)

② 2つ目は、歩いてタッチしていく“道”
自分がタッチされたら、歩いて次の人のところまで行ってタッチ→タッチされた人は、その次の人を探してタッチ→…… でやっていきます。


次にタッチする相手は、先ほどの“名前の道”とは別の人を選ぶので、“名前の道”と違う順番を覚えていかなくてはいけません。

→まずは、2つの“道”を同時にやってみる🔥
タッチされたら次にタッチする人を探す(席の立ち位置も変わっていくので、目線もきょろきょろ)/自分の名前が呼ばれたら、次の人の名前を呼ぶ……それぞれの2つの道を、並行してやっていきます。
タッチに気を取られて“名前の道”を忘れないよう、逆もまた然り。
最初は混乱していましたが段々慣れてきて、2つの道まではまだ何とか大丈夫そう……?

③ 3つ目は、指パッチンの“道”
今度は、指パッチンを次の人(“名前の道”“タッチの道”とは別の人)に回していきます。今度は、ちゃんと渡したい人の顔を見て、指パッチンを渡したことに気づいてもらわないと、順番を次に回すことができない…💦 これが3つ目の道。


→なんと、この3つの道を同時並行で挑戦🔥
タッチを回した、と油断していたら、名前を呼ばれて慌てて次の人の名前を読んだり。他の“道”の様子に気になりすぎて、自分が指パッチンを次の人に渡そうとしても気が付いてもらえず、気づいてもらうまで何度も「渡すよ!」のアピールをしながら動作を繰り返したり……。自分の順番が2つ・3つで同時に回ってくることもあり。お互いに助け合って懸命に、何とか3つの“道”を回し続けることができました!

(写真左側は指パッチンを渡す人/右側は次の人にタッチをしにいく人。
同時に名前も回していっています。)

最初は「難しそう!」と思っても、先週のワークショップで言われた「無理だと思わないでとりあえずやってみる」を思い出して、“チャレンジしてみる”気持ちを持ってトライすることができました。他のワークショップでは、もっとたくさんの“道”を同時にやってみることもあるそう。皆さんてんやわんやになりながら、ちょっとハードな(?)準備運動の時間でした…!

●前回からの続き、皆で話をしてみる・聞いてみる

全員で先週の最後にした、「日々の生活のこだわり」の話の振り返り。
湯たんぽの話、朝のテレビ、チラシの裏紙、箸置き、犬と話す旦那、こたつで座る場所、野菜を切る……全部で十数個の話を、別の人が「どんな話だった?こんな話だったかも?」と思い出しながら、自分の話として話してみました。
もともとは「旦那さんが自分とは話をしないのに、家の犬とならよく話す」というような話が、「旦那は動物に好かれやすくて、近所の犬と会ったときに犬と話が通じていたそう。…」というふうに、話す人によって話の中身が変化していく部分も大いにあり。


前回不参加だった3人の方も、今回で聞いた話を自分の話として話してみる、を体験してみました。散歩中の犬のうんちの話が、うんちを散歩中の斜面でする話や、山で拾って飼い始めた2匹の犬のトイレの話になっていったり…。
聞いている人から、気になることの質問もしていきます。「犬の名前は?」「犬の種類は?」……。

話す人にとっては普通の日常の話でも、聞いている人は十分に面白い話として興味を惹かれる部分があったり、質問のやり取りでも「そうなんだ~」「こう答えられると思わなかった!」など、意外性を感じてもっと面白い部分が出てきたりしました。

ここで一旦、休憩タイム……。

●2人でちょっとお芝居、を見てみる

今度は話す人・話を聞く人・見ている人を作って、話をする人と聞く人がちょっとお芝居をやる・それを見ている人が面白いところを探す、ということをやってみました。


まずは1組目。「家族が使う箸の中で、自分がお気に入りの箸の色がある。毎回その色を使うと自分のお気に入りだと気づかれてしまったら嫌で、たまに違う色の箸を使っている」という話を2回、講師からの指示を変えて、その変化を見てみました。

1回目の指示:「話を聞く人は、見ている人が面白いと思えるように聞く」
 (右側の話を聞く人は、相槌も頻繁にうち、リアクションも大きめ。)

指示を変えて2回目:「話す人は、さっきと同じように話をする。聞く人は、自分の手のささくれが気になりながらも、話は一応聞いている、という気持ちで聞いている」
(右側は話を聞く人、手のささくれが気になる。
左側は話をする人、話をしたくて、聞いてもらおうと話を続ける。)

1回目のときは、話を聞く人が話の内容に興味津々で、という空気でしたが、2回目のときには、少しおざなりな話の聞き方。それでも見ている人にとっては、2回目の方が話を聞いている人の様子に目が離せない・思わず笑ってしまう空気感がありました。

武居さんからは、「いま皆は、話をしている人よりも、話を聞いている人を見ていた。“お芝居”というと台詞を喋ることばかりに気がいっちゃうが、話を聞いている人が重要。……」とのこと。

2組目からは、話とは関係のないような設定をつけてやっていきました。見ている人は、そこでどんなことが生まれるのかを、面白がりながら見ていきます。

2組目:洗濯物の干し方の話をする。
+設定:大喧嘩していた親友に、喫茶店に呼び出された。話を聞く人は、相手が謝ってくるのかなと思っていたら……。

聞いている人はあまりリアクション・動作を取らなくていい、と言われて、何度かトライ。
「見ている人が想像してくれるから、やっている方は、どうやってもいい。見ている人が面白いところを発見してくれるから、やる人は無責任でいいし頑張らなくてよくて、その場に身を委ねたらいい」そうです。

3組目:犬と話すお父さんの話。
+設定:卒業式の日、男の子が校舎裏で「好きです、付き合ってください」と渾身の想いを伝えて頭を下げたあと、女の子からの返事は…。

1回目の後に、「お芝居のトーンにしようとしなくて、普段のトーンで話していい」とアドバイスを受け、再度トライ。設定は奇妙でも、2人の間の空気感はどんどんリアルに感じられるように変化していきました。

4組目:道路のひび割れの部分の歩き方の話。
+設定:病院の診察室で、医者が患者に向かって話をする。
(話をする人は、ただ話をしたいから話をする、という気持ちで、話をしてみる)

5組目:犬の散歩のときのうんちの話。
+設定:女性警察官が、職務質問で呼び止めた男性の手荷物検査をしている間に、話をし始める。

6組目:お箸の色にこだわりがある話。
+設定:プリキュアショーが終わって、着ぐるみの頭だけをとった休憩中のおじさんが座っている。そこに女の子が迷い込んできて、「見られた!」と思ったおじさんが、女の子に話を始める…。
(女の子の足の出し方や距離感が、何ともいえない絶妙なリアルさ)

ここで、休憩タイム……

●最後に、荒井さん作の戯曲が登場!

(先週のワークショップで出た話から荒井さんが見つけた“種”を、体感してみる時間)

先週のワークショップから発想して荒井さんが作った戯曲は、1対1の会話による戯曲の3部作です。
 ① 年配の2人がお喋りをしながら、お雛様を飾る準備をしている。
 ② ベンチに座っている人の前を、歩いて通り過ぎる人の会話。
 ③ 湖畔で若い2人が話をしている。  というシチュエーション。
台本のト書きは細川さんが読みつつ、それぞれの台本を渡された2人が読んでいきました。

(音読する2人は、お芝居をせずに目の前の人にしゃべりかける感じで話す、
相手の話を聞いて返していく…で読んでいきます)

話の内容やゲームの中で不意に起きたこと・出てきた言葉などが戯曲の中に入っていて、「そうそう、こういうことがあったな」「あの話のワードがここに入っているんだ!」など、皆で笑いながら面白がって、楽しい本読みの時間でした。

先週は不参加だった武居さんは、前日にこれを読んだときは、何の話かさっぱり分からなかったそう。でも、今日のワークショップの後に声で聞くと、すごく面白く感じたそうです。

細川さんは、「喋っている内容そのものだけでなく、2人で喋っているさらに奥に何があるのかを知ろうとしている時間がある。そういう、空気感のようなものを見ていけると面白いかな、というワークをやっていきたい。……」とのことでした。これで今日は終了。
明日は、皆でめちゃくちゃな話をしてみる・話の中から一部分を取って、そこから話を作ってみる、をやってみるそうです!
 

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\カメレオンのうらばなし/

第2週「お話を探そう」の1日目を振り返り、
講師の武居さん、細川さんにお話をうかがいました。
サポートCの五味さん(隊長!)、
ブログ担当スタッフの山内さん(参加者!)も参加して、
あれやこれやワイワイ語った「うらばなし」です。

 

 

――今日は、前半でほぐしていき、後半は「みんなの前でやってみる」ところに一気に進み、見ていてちょっと驚きました。

細川 距離が生まれる「さんづけ」の脳にならないように……とか、目を見る、触る、助け合いがうまれるっていうようなことをやって、あとは、前回いなかった方に改めて紹介をしがてら、次のステップまでいければいいな……というのが前半でした。

武居 驚いたのは、皆さんの話を聞いていると、先週聞いた話をそのまましているのかなっていうくらいナチュラルで、でも「全然ちがう」って。自分が失敗したり変になっちゃってもいいっていうふうに、これまでの時間でなっているんだなって感じました。だから、席の位置はみんなの前になったけど、さっき話したのとあんまり変わらないっていう状態で、「あ、じゃあやりますかー!」みたいなね。ふつうだったら「やだやだ」とか「わたし指さないで」とか起きるんですけど、「お、腰軽いな」っていう(笑)。

五味 そう、それって茅野の、市民館の特色なんですよ(笑)。

――で、前に出てお芝居をしてみた時に……

五味 お二人(武居さん・細川さん)が時々、目配せされていたじゃないですか。あれはやっぱり抑えどころというか……

武居 言葉にするとむずかしいんですけど、いわゆる、演技をしている「風(ふう)」というか。そっちにスイッチが入っちゃうと、やっていることの根本の意味が変わってきちゃうので、そういうのはピッ…て(目配せ)……

細川 (目配せ)今、ちがうよねって。

武居 もう一回やってもらおうかって。悪いことじゃないんですけど、今回のワークに関しては、そうじゃないところから丁寧にスタートしているので。「こういうつくりかたをするなら」っていうこだわりの部分というか。

細川 それこそシェイクスピアの時代のお芝居とかをするなら、「感じて」っていうよりまず「大きい声でしゃべろうか」ってなる。だけど今は、みなさんの日常のなかにある、ちょっとした心の動き、エンジンみたいなもの、ピッて動いたものを、しっかり注意深く見ていればおもしろいから。これってたぶん大きい劇場では通じない。けど、みんなで共有した話を、この距離でやるからできるっていうのがあるよなあって思っていて。演技ってことを先にやろうとしちゃうと飛ばしちゃいそうになるんだけど、そしたらもったいない時間になっちゃうから、飛ばさせないっていうのは、やっていましたかね。

五味 丁寧に繰り返していくっていうのが、いいなって思いました。やり直ししなければそのままだったかもしれないけど、やってみるとその違いが見えるから。

武居 そっちのほうがわかりやすいですよね。やっているほうは「え、これでいいんですか?」っていうほうが多いと思うんですけど。

細川 なんだかわからないけど、見ている人に笑いが起きたり、おもしろかったって言われて、そうなんだ……っていう。成功体験というか。

武居 それが気づき。ぼくらも最初そうだったから。

――やっているときは渦中にいるのでよくわからないけど、見る側になったとき「あ、たしかに!」って感じられる。渦中にいた人は、そんな感じでしたか?(山内・うんうんうなずく)
あと、話している側ががんばるんじゃなくて、見たり聞いたりしている側のほうが大事っていうのは、ずっとおっしゃっていますよね。


細川 演技のワークをやるとき、みんな割としゃべり方を練習するんですよね。自分たちもそうだったけど、どうやったらおもしろくしゃべれるか、このワードをここにもってきたほうが受けるぞ、とか。でも果たしてそれか?…って最近思っていて。

武居 話をちゃんと伝えていくっていうお芝居もあるし、おもしろいんですけど、ここでのつくりかたでは、空気というか、人と人の間で行われている“これ(人との間に円を描きながら)”をもっと大事にしていったほうが演劇になっていくと思うんです。

細川 その“これ”を、大きい劇場なんかでもしっかりできると、おもしろいですよね。どうやって増幅させていくかっていうのはテクニックなんですけど。

武居 大きいホールだと、遠くにいる人も同じ体験をするために、そういう技術で増幅をしなきゃいけないだろうけど。

細川 演技は結果を見ているから、技術のほうだけ真似しちゃう人は、その結果を真似するんですけど、その手前が絶対にある。その過程をしっかり体験してもらおうというのが今回で。でも、俳優になるためのワークではないので、こうやっておもしろがることで、日常にちょっと彩りがうまれればいいな、というか。そうそう、前回帰りに、荒井が「すっごいおもしろかったね、全員の話!」って大喜びしていたんです。そういう感性があれば、いろんなところがお芝居にも劇場にもなるだろうし、その最初の一歩になればいいなって。

――そう、前回みなさんから聞いた話をもとに、荒井さんが3つの台本を書いてくださって、最後はその本読みでした。読んでいる方がもともと持っている部分が素直に出ていて、ちょっとジーンとしちゃうというか……

武居 特に年配の方々の、その長年生きてきた、味のあるしゃべり方。演技しようってなるとそういうのが全部なくなって、みんな同じような言い方になっちゃうんだけど、それを残したままの本読みってなかなか聞けないから、いいなあーって。

細川 そうなんですよ。ぼく、高知でやっている市民参加型演劇でいつもそれを感じていて、いつも打ちひしがれるんです。ぼくらは一か月半かけて「その人」をつくるんですけど、市民には「その人」がもういるんですよね。だからあとは演劇的なパス回しだけを教えて、うそをつかずに今やっていることをちょっと増幅させていくっていうのを心がけてつくっているんです。

武居 ぼくも高知の舞台に出演させていただいたんですけど、もうね、勝てないんで、全力で技術で勝負してやりました!(一同笑) 最初、本読みを聞いて「あー、すげえなー。もうその人たちいるなー」って。こっちはゼロからだし、土台がちがう。もうここは技術でいくしかない!って(笑)、でも勝てなかったですね。

細川 で、その人たちが技術に憧れて「武居さんすごいー」って(笑)。でも市民の方にもよく言うんですけど、みなさんの生きてきた経験からの、市民がやるお芝居って、もっともっとすごいんだよなって感じているんです。

武居 ぼくが今日聞いた話や見たものって正直、去年見たお芝居とかよりおもしろかった。たぶん、残るんですよ。だから、来週の発表が終わって、数年後に「あんとき見たあれ覚えてるな」「あれおもしろかったな」って残っていたら…っていうのが、一番の希望ですね。頭のなかで増幅しちゃっているんでしょうけど、でも、それにかなう演劇ってなかなか出会えなかったりするから。

――ランポンさんたちは、そういういろんなところをすごくよく見つけて、気づいているんだなって、荒井さんの本を見て思いました。

武居 ひとりの人が何か思いついてくれるのを待っているんじゃ、できあがらないつくりかたをしているので。稽古で「全然つまんねえな」って思ってたけど、ぽろっとだれかが言ったひとことに「それだ!」ってことがあるから。

細川 言い間違いから一本できたよね。

武居 最後の最後に間違えて(笑)、「あー見つけたー!」って。

細川 つまんないことのほうが多いんですよ。だから明日は、今日みたいにおもしろくないと思います(笑)。でも大切なのは、おもしろいことを言うことじゃなくて、おもしろがる心。おもしろいものをみんなが見つけようとすることが、演劇をつくるうえでは一番大事かな、と。つまらない日常も、ちょっとしたことで素敵に見える瞬間がある。お芝居で、その機微みたいなものをたくさん詰め込むことができれば、とてもいいなって思います。