2025/03/02

2025/3/2 演劇WS「カメレオンのみつけかた」-第1週 はじめましての準備運動

★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第1週 はじめましての準備運動
日時:2025/3/2(日)13:30~16:30
会場:茅野市民館 アトリエ
講師:シアターランポン 細川貴司、草光純太、荒井正樹
参加者:17名
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いよいよ、3月の演劇ワークショップがスタート。
小学5年生や高校生~70代の方まで、幅広く参加者の皆さんにお集まりいただきました。
ちなみにご参加の皆さんは、年代もバラバラながら、演劇経験の有無も様々。
市民館によく来てくださる方や、今回が初めましての方もたくさんご参加くださって、全5回のワークショップがこれから進んでいきます。

●初回は、「はじめましての準備運動」!

サポートCの五味さんから、今週の3名の講師をご紹介いただいたあと、細川さんの挨拶でワークショップがスタート。3週にわたるワークショップの中で、講師の方々が毎週変わっていきます。

(今週の講師は、シアターランポンの細川さん・草光さん・荒井さん)

カメレオンのように日常の中に隠れている“演劇の種”を探していくワークショップの初回は、準備体操でたくさん遊びながら、心と体を柔らかくほぐしていきました。

● “大人のフルーツバスケット” からスタート

輪になって全員がイスに座った状態から、イスを1脚だけ外して、“大人のフルーツバスケット”からワークがスタートしました。
「茅野市内に住んでいる人」、「昨日の夜ご飯を覚えている人」、「朝パンを食べた人」、「猫が好きな人」、「雪が好きな人」、「推しがいる人」……などなど、


様々に質問を投げかけながら、皆さんお互いの雰囲気も何となく掴めたような感じ。
お互いの顔に少しずつ馴染み、体も少しほぐれてきて場の空気が砕けてきたところで、最初の準備体操が終了。


●みんなの名前を覚えるのも、ゲームで…?

お次は、全員の名前を一度に覚えてしまうゲームです。
1番最初の人から、「こっちゃん」・「まきまき」・「ゆみころ」・「ごん」…など、自分が呼ばれたい名前を言っていきますが、輪になって時計回りに座っている順に、どんどん覚える名前が増えていきます。
 ・最初の人が、自分の名前を言う
 →次の人は、最初の人の名前を復唱し、そのあとに自分の名前を付け足す
 →その次の人は、最初の人~自分の前の人までの名前を順に復唱し、最後に自分の名前を付け足す。


そんなふうに、自分の名前を付け足しながら次の人に順番を回していき、全員で反芻していくことで、いつのまにか最初から最後の人まで全員の名前を、全員がひとまずは覚えていました。

やってみる前は「人の顔と名前を覚えるのは無理だ~」と口々に言っていた方も、「無理だと思わないで、自分を信じてやってみる」という言葉を細川さんからいただき、とにかくチャレンジ!の気持ちに。誰かが名前が詰まってしまったときも、周りから「ま…?」と最初の文字の助け舟が出されたり、ときにはジェスチャーされたりしながら、全員で見事に達成しました!

●立って歩いて目線を合わせて、手を繋いで!

皆さんお互いの名前をなんとなく覚えられたら、次からは立って動くワーク。全員がワークショップエリアを自由に、バラバラに歩きます。

歩く行為を続けている内に、段々と細川さんより指示が増えていきます。

 ・きょろきょろせずに歩く、すれ違う人とは目線を合わせる。

 ・細川さんが太鼓を1つ鳴らすと、その場で止まる。
 ・太鼓を2つ鳴らすと、その後に続けて打たれた音の数の人数が集まり、グループを作って座る。

 →グループで座れたら… お互いに自己紹介をして全員で握手。

 →人数が集まらずにグループを作れなかったら… 全体に向かって自己紹介。


4人グループ、10人組グループを作る…など、いくつかゲームを繰り返しているうちに、最後は9人組のグループを作るよう指示が出ました。9人組のグループが2つちょうど出来上がり(参加者17名+講師の草光さん)、今度はそのチームでの対抗戦に移ります!

(写真奥側:チームうさちゃん🐇、手前側:チームひな祭り🎎)

●2チーム対抗、電流ゲーム

チーム全員で輪になって手を繋ぎ、スタートの人から手をぎゅっと握り、握られた感覚で次の人の手をまたぎゅっと握る…そういうように、手を握る感覚でぎゅっとを1周させたら「はい!」とチーム全員で手を挙げ、その終わりの早さを競います。

(まずは全員で1つの輪っかになって、お試し版)

初戦はチームうさちゃんが勝利! 毎ゲーム後には、それぞれのチームで作戦会議の時間を取ります。

(チームごとに小さく集まって、ひそひそ会議)

「手の握り方を変える?」「最後の手挙げも、手を繋いだままでしてみる?」…作戦会議で出たアイデアをあれやこれやと試してみるものの、合計5回戦ほどした間に、チームひな祭りが勝ったのは途中の1回のみ💦

(厳正なるジャッジは五味隊長!)

最後は、再度全員での「電流ゲーム」にトライ。最初は4秒台→最終的には2秒台まで縮める目標のもと、全員での作戦会議を繰り返します。
先程は2チームに分かれて出たアイデアを共有しながら、「感覚が早い、若い人にスタートをしてもらう」「目を瞑ってやってみる?」「お互いに距離を縮めて、輪を小さくしてやってみる」など数回トライし、最後のチャンスでとうとう目標の2秒台を成功することができました!  ここで、一旦休憩タイム……

●ちょっと変わった伝言ゲーム→ 無対象の物の伝言ゲーム?

先ほどのチームごとでワークを続けます。
1チームずつ交代で1列に並び、細川さんに宣言されたのは「無対象の物の伝言ゲーム」…? 物は無いけれど、その物があるようにジェスチャーで次の人に渡していくゲームです。

例えば、お題:りんご🍎 だとすると……
 → りんごそのものをジェスチャーで表すのではなく、りんごをかじってみたり、りんごの持ち方を工夫してみたりして、次の人が「何だろう…りんごかな?」と分かったら、りんごの受け渡しをする。そうして、また次の人に伝わるように、見えない物の受け渡しをしていく。

自分が物を受け渡される番までは、それまでの人がやっていた行為は全く見えないので、前の人の素振りだけを見て、何を渡されているのか?と想像して、次の人にどうやったらこの物が伝わる?と、真剣に考えてやっていきます。
どうしたら物を実際のように渡せるのか?やってみても、「分からなかったから、もう1回やって」と態度でお願いされたり、スムーズに渡せるときもありつつ、やっている方は、それはもう必死です……。

何を渡そうとしている…? 後から聞くと、”鎖になにかぶら下がっている物(?)”を渡したつもりが、干物を受け取って次の人に渡した、と!


上の写真は、「指輪、こういうふうにも渡せるよね」と細川さんよりアドバイスを受けている場面。最後の人まで行くと、何を渡されたと思ったのかを1人ずつ聞いていきます。
勘違いも含めて楽しい!「できるはずがなくて当たり前、困っている顔も含めて楽しみましょう」と細川さん。


最初から最後まで上手く伝わったのは、お題:赤ちゃん のとき。抱っこの仕方・床に寝かせておしめを替えてみたり、顔をみせてあやすような動きをしてみたり…。

必死にやりつつも、それを見ているもう1チームの側は、渡されるうちに変わったり変わらなかったりする物や、皆さんが必死に動作をしたりしている様子が、いい意味で面白くて仕方がない! 「あ、渡されている物が伝わらなくて、変わっていったな」「その持ち方をしたら、物が落ちちゃう!」「そうやって渡すのか~」「上手く伝わったね」など、見ているだけでも場の雰囲気が盛り上がり、たくさんリアクションが出てきます。


自分が見ているチームのときは、お題を考えた人以外は物の正体が分からないから、動きをよく見て考えながらも、ついつい面白くて笑っちゃうし、自分がやる方のチームのときは、順番待ちの間は他の人がやっていることは見えないのに他の人の笑い声だけ聞こえてくるから、「何が渡されてくる?」とそわそわしたり、時間があっという間に過ぎていきます。
「ひなあられ」「ラーメン(途中は蕎麦やスープに、最後はアイスクリームへ!)」「野球のグローブ(最後は指輪になりました)」などお題を変えていき、全員でゲームに熱中。

ゲームに熱中する中でも、「分からない物を渡され、とにかく分かろうとしている」「分からないと困っているのも面白い」「明確に、次の人に伝えようとすることをやっている」と細川さんが言った通りの心と体の状態まで、参加者全員がなっていっていました。
上手くいくから面白い、のではなくて、どんなふうに作っていこうかワークショップで考えたい、と言っていた細川さんの言葉が印象的でした。
そんなこんなのうちに、再び休憩タイムへ……

●最後に、来週に向けて! 「日々の生活のこだわりの話」

今度は全員で、また最初のように円を作ってイスに座りました。
「日々の生活のこだわりの話」をただ話していきます。
朝のお味噌汁の話、洗濯物の干し方・畳み方のこだわり、
通学路で道路のひびの部分の歩き方、家族で使うお箸の色・お箸置きの動物…。
ご自身からすると本当に何気ない・とりたてて面白くはない日常の部分が、聞いている周りの方からするとすごく興味を惹かれて、どんどん質問が重ねられていくことも。

(こだわりを話している内に話が広がったり、
周りの方からの質問で、どんどん聞いていて面白い部分が出てきたり…)

(質問しながら、なにやらすごく熱心にメモを取る講師の荒井さん)

そうして、最後には少しだけ、来週に繋がっていく部分を一度お試し。
話されていた“こだわり”を、違う人が自分のこだわりの話として、皆に語ってみます。
「メモを取る」というこだわりを別の人が話し、周りからも「どんな紙にメモをするのか?」「どんなサイズ?」と質問が重ねられて、どんどんとその人自身のこだわりとなっていきました。


終わったあと、自然に皆さんから拍手が起きました。
細川さんから最後に、「“淀みなく答えているから上手い” とかではなく、そのこだわりが “自分のものになっているから” 演じるのが上手く感じられる、人のものを自分のものにできている」 という話があり、初回のワークショップが終了。
…これが、来週のワークショップに繋がっていく、そうです!
 
 
 
 
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\カメレオンのうらばなし/

第1週「はじめましての準備運動」を振り返り、
細川さん・草光さん・荒井さんにお話をうかがいました

 

 

――今日のワークショップは「はじめましての準備運動」ということでしたが……

細川 前半は、仲良くなるときにぼくが大切にしていること、してほしいなということの「一歩先」を設定して、みんなにやってもらいました。

たとえば〈歩いてください〉のとき、ほんとにしてほしいのは「目を合わせる」ことや「意識を外に向ける」こと。〈名前をおぼえる〉で「できないってあきらめないで」っていったのも、やろうと思ったらもっと見るし、助けるから。〈電流〉も、早く回すことじゃなくて「ずっと手をつないでいること」がぼくの目標だったんです。どのワークも、与えられた課題をクリアする手前でいろいろ体験している。その時間を持つことで、小さなコミュニケーションの最初の段階がすごいスピードで行われているんですよね。

草光 ちがう目的を達成するために、まずは熱中しなきゃいけないんですけど、みなさん、目の前のことに熱中しだしたのが早かったですよね。そこに時間がかかるかどうかで中身が変わってくるんですけど、いろんなものがポンポン出てくるし、みんなで「あ、これなら話せるな」って状態になっていって。ジェスチャーゲームのときも、見られているんだけど、あまり変な緊張をせずに、熱中できていましたね。

――ジェスチャーの伝言ゲームは「受け取ったものを次の人に、表して渡していく」というのが新鮮でした。

細川 あのジェスチャーゲームは、全員うまくいったとしも「だから何?」なんです。でも、とまどったり、「え?」って思ったり、びっくりしたり、違うことを発想したなっていう瞬間を人は見て、「あー」ってなる。感動するってそういうことなんじゃないかな。最終的に、ぼくらは戯曲のなかであれをどう起こすか、っていうことが大切になるんですけどね。

――後半は、みなさんでお話をして、人の話を聞いて…という時間でした。

荒井 おもしろかったですよね。「なんだよそのこだわり!」って思うんですけど、だんだん話に夢中になってくる。知っている参加者さんがいて、いつも頑張っている姿を見ていたんですけど、話をして夢中になってくると、ほんとうに自然な姿で。あと、一番年下の子も、やっぱり最初は緊張するんだけど、最後しっかり話をしている姿を見た瞬間に「お!」って。やっぱり時間をかけているから。

細川 「つまんないことだと思ってたけど、人は笑うんだ」とか、「人の話っておもしろいね」とか、劇場を出たときにちょっと世界の見方が変わっているっていうのは、演劇と同じ役割だと思うんです。
今回のワークは、うまくやることではなくて、発見したことをみんなで共有する場をつくろうと思っていて。ジェスチャーゲームでもそうだけど、うまくできなくていいんです。「こだわり」の話をしているとき、「いつからですか?」って聞いたら「覚えてないなー」って言っていたじゃないですか。自分の話をしているときにはそれができる。「うまく言えない」っていうことができる。でも、それを面白おかしくやってやろう、演劇ってそういうもんでしょっていう、よくわからない欲が出てきてしまう。そこではないスタートを切ってみるというのが、今日の1日だったかな、と思います。

――ジェスチャーゲームのなかで「イメージがつながっている。それがあれば伝わっていくんじゃないか」っておっしゃっていたんですけど、前回の入門ワークショップの「話を聞いて、聞いたことから想像してみる」「そのなかにいる」っていうところと、つながっているように感じました。

細川 「感じたことを表現する」のではなくて、「感じた」ということを「ちゃんと伝える」というか。もう、そのままで十分、表現なんですよね。
で、「人の話」を「自分の話」として話すとき、「変わる」のはいいんですよ。おなじようにしなきゃいけないなら撮って流せばいい。でも演劇は、その「変わったところ」がふくらむところ。台本を読みこんだときにふくらんでくるのと同じこと。他人に渡すから、想像力が加わっていくんですよね。