2025/03/16

「カメレオンのみつけかた」第3週-② お話を立ち上げてみよう

★シアターランポンの演劇ワークショップ
『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第3週-② お話を立ち上げてみよう

・日時:2025/3/16(日)13:30~16:30
・会場:茅野市民館 アトリエ
・講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司、草光純太、堀田康平
・参加者:20名
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全5回のワークショップも、今日が最終回。

●早速、稽古の時間がスタート

(それぞれのグループに分かれて、昨日の稽古の続き…)

(今日は小道具を持参……?)

(この組は、今日から稽古スタートです)

(稽古中から、周りの人も面白くて笑っちゃってる!)

(昨日の稽古でのアドバイスを思い出しつつ、今日もブラッシュアップ!
猫を探す人の頭になって、相手と会話しながら……)

1時間くらいの稽古の時間も、あっという間⌚
もうちょっと練習したい?いよいよ発表、の直前の緊張?
どきどきソワソワしながら、発表のスタートを待ちます……

●いよいよ、発表の時間です!


(全部で10の芝居ができました。発表の順番は、くじ引きで決定!)

5分ほどの短い、10の芝居を続けてみていきます。
発表が始まる前に、武居さんからちょこっとお話がありました。
みんなが昨日・今日の2回のお稽古で作ってみた芝居も、全然まだまだ稽古の途中の段階のもの。ランポンの芝居の作り方では、ここで出来てきたお芝居から、「そこ、面白いな」「この部分を、もっと発展させていくと面白いものが作れるかも…」とか思いながら見ていくそうです。「ここから、こういう展開になると、もっと作っていけるかな…」といった、お芝居の種をみつけていく。見ている方がみつけていく、この「カメレオンのみつけかた」のワークでもポイント、とのこと。

この発表でも、「ここ面白いな」「この一言からこう展開していくと、もっと膨らませていけるかも…」とか、見ている人も“欲”をもって見ていきます👀

1,茅野ひな祭殺人事件
殺人事件が起きた洋館の一室で、集まった館の人々に対して、名探偵が推理を披露、と思いきや……?
(名探偵あっすーが口を開くと始まったのは、洗濯物干しの話や箸置きの話。
「これはそういう事件です」、ここから真犯人に繋がる、の…?)

2,ごんちゃん
たまにはアウトドアで遊ぼうと出かけたら、山のバーベキューで、海外のクラブで、ホテルの朝ごはんのときに、帰りの飛行機で…いろんなところで、オスカルさんと出会ってしまう……気のせい?
(ごんちゃん1人での語りだけでも面白いのに、
そこに絶妙なタイミングで、オスカルさんが入ってきた!)

3,量子力学
喫茶店で集まった女性3人組。そのうち1人が、量子力学のすごさを、他の人に話していく……。
(傍から聞いているとよく分からない話だけど、話している本人たちは楽しそう。
話しながらどんどん話題が変わっていく感じが、「ありそう!」と思っちゃいました)

4,ばぁばとじぃじ
ばぁばの家で、ごはんを食べた後、「ばぁばとじぃじは、どうして結婚したの?」と聞く孫。「本当のことを知りたい!」孫に、上手くはぐらかそうとする…。
(太平洋のしらすを見つける話…、ゴーヤの蔓で入口が隠れている洞窟にいるばぁばを、じぃじが見つけた話…、孫からの質問を作り話で乗り切れる??)

5,遅刻の理由
遅刻した生徒に対して、理由を聞く先生。口が達者な生徒は、とにかく話し続けて、遅刻の理由の正直に話をしない。しまいには、早口言葉で先生を諦めさせちゃう……!
(へその緒のDNAって、お母さんの?自分の?疑問を考えていたら遅れた、これも嘘?
久しぶりにあったコーチと夢の中で長話してた、これは本当?)

6,高いねこ
公園で、「ハチ~、ハチ~」と、いなくなった猫を探す男性。様子を見ていた女性も一緒に探すことになり、「ハチは高い猫、あの猫は安い…」「本当は犬派なんだけど…」と言いながら探していく…🐈
自分の出番に緊張しながらも、「とにかくやってみるか」の気持ちで相手を見ながら、
やってみました。)

7,おさななじみ
雛飾りの準備をする幼馴染2人の会話です。第2週のワークショップで読んだ荒井さん作の台本を、もう一度同じペアでリーディング🎎
(おみっちゃん家のコタロウはヤギ?羊?「記憶が曖昧…」と言いながら…

8,贈る言葉
卒業式後の教室で、担任の先生から卒業していく生徒たちに、最後のホームルームの時間。
昨日のワークから稽古を経て、今日も名詞を引いて即興で話をしていきます。
(昨日に引き続き、教室に入ったら生徒全員が目出し帽を被っている設定。
今日は先生も目出し帽を被って、先生からの最後の話。)

9,あまやどり
女の子が雨宿りで軒下に駆け込むと、先に雨宿りしていた人は傘を大事そうに持っている。「そこまで傘に入れてほしい」とお願いしても、なかなか傘をさしてくれない…。
(「友達からの傘だから大事で、どうしても使えない」と…
女の子が諦めて、大雨の中走って去っていった後に??)

10,ドライブデート♡
何回目かのドライブデート🚗 今日も男の子側が、引いた3枚の名詞を使って即興で、「マイクみたいに、2人の幸せを…」「落書きみたいに、伝えたいことがあると…」と、ロマンチックな話をしていきます✨

(話を聞く女の子は携帯をいじり始めちゃったけれど、「今日のために、
昨日スカートを買った」と話します。関係性は進展していると思っていい…?)

自分の発表が終わると気楽になって、初めて見る他の人の芝居に大笑いして…、楽しい時間もあっという間に、全グループの発表は終了しました。

●本当に最後に、みんなで感想タイム


最後は全員で、発表の感想を共有。

・先週のワークショップで自分がした即興の話が、ここの話に入っていた。面白くしてもらって、ありがとうございます!
・出た話をそのまま芝居にしてやっても面白さがなくて、実は稽古の中でいくつもやってみてた。…
・ロマンチックな話で、「小さなバネ」から、バネの力は弱いけれど、受けいれる力が強い、と繋げた、さすが!
・ドライブデートの話は、シチュエーションを変えてシリーズになりそう。でもシリーズになるということは、関係性はなかなか進展しないということ?!
・猫を探す話、最初に探していた飼い主の方が、探すのを手伝ってくれるってなったら、自分が話し始めて、自分で探す気がないように見えたよね。
・雨宿りの傘をあんまり大事に持っているから、傘をくれた友達に何かあったのか、とか、そういう想像も膨らんでいっちゃった。実際の友達のことが頭にあったのかも。
・喫茶店3人組の会話。話題によって、1対2の構図がどんどん入れ替っていくのがおもしろかった。隣に座っていると、思わず「なんの話をしてるんだ?」となっちゃいそう。
・真実めいた演技で、どんどん入っていっちゃった。
・「目出し帽」を実際に被っていなくても、お芝居だと言ったことが真実になる。本当は目出し帽を被っている設定だから皆の目しか見えていない状態のはずだけれど、言ったことが真実になるから被ってなくてよくて、…。
幼馴染の2人の関係性で、会話の中での言い間違いも、自然に聞こえた。

…などなど。他の人の感想にうなずいたり、一緒に思い出して笑っちゃったり、皆が終始笑顔での感想タイムでした。


発表した芝居の中は、これまでにやってきたワークで、皆さんから生まれた“芝居の種”がもとになっていました。ワークの中で出てきた話を膨らませていたり、即興で出た言葉が芝居の中で使われていたり…。ワークの中で気張らずに、日常の身の回りから出てきた話からここまで面白くなるんだ!と、改めてびっくり。
ランポンさんの芝居の作り方だと、今回のように10ほどのちょっとした芝居を作っても、ここからさらに稽古を重ねていって本番の芝居に使われるのは2~3つほどかな、とのこと。今回のワークショップはランポンさんの芝居の作り方を、ほんのちょっと、入り口の部分を触れられたのかな、の体験でした。

最後に細川さん・武居さんより挨拶。
「このワークショップで、見ている方の見方、面白がって見ることを体験して、ここからまた日常にかえっても、日常の中の些細なことに隠れている“種”を見つけられたり、日常にもっと彩りが増えていくといいな、のワークショップ。…」とおっしゃっていたのが印象的でした。

(最後に、ワークショップ全編を通して見守ってくださっていた五味隊長からもご挨拶。
本当に、ありがとうございました✨)

ワークショップが終わっても、今回参加くださった皆さんの日常が、ちょっと違って感じられたりして、ときに楽しく?面白おかしく?なっていくような感覚がきっと残るんだろうなぁ、と、最後の挨拶を聞きながら、ちょっとしみじみしちゃいました。
これで本当に全5回が無事終了、皆さんありがとうございました!


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\カメレオンのうらばなし/

とうとう最終日。
稽古から発表、感想の共有まで
「カメレオンのみつけかた」のあれこれを
みなさんと振り返りました。

 


――今日の発表を経て、改めてみなさんの感想をお聞かせください。

草光 見ていて思ったのは、しゃべっていない人の「圧」が人をしゃべらせるっていうのが、どれもうまくいっていましたよね。どうしても、演劇を見ているときってしゃべっている人を見ちゃうようなところがあるんだけど、しゃべっていない人がどんどん魅力的に見えてくるっていうのは、ある関係がうまくいってるんだなあって。それによってしゃべる人も、今まで稽古では出てきていなかったような言葉がぽろっと出てきたりして、そういう影響を与え合っている感じが、すごくおもしろかったですね。

武居 見る側もですけど、やる側も「ここおもしろいな」っていうこだわりがないと、「なんだその話、大したことじゃないじゃん」ってなっちゃいがちだと思うんです。でも、やる側が「ここがおもしろい」ってやっているから、それで成立しているのはすごいなって。

堀田 ぼくは最後の2回だけの参加で、ここまで立ち上がっていく過程を見ていないんですけど、みなさんが堂々と発していたり、動けたりするのを見て、「どんなことしてきたんだろう」って思うくらい。昨日から今日の稽古までの時間で「ああしたい」「こうしたい」っていうのを持ち帰って過ごしたなかで、「こんなこと考えてきたよ」っていうのも聞いたし、それは今日の服装なんかにも表れていたりして、なかなかできることではないよなあって思いました。

武居 失敗しても怖くない関係になったのは、いいなって思いますよね。失敗してもおもしろいところ探してくれますよねっていう関係。

草光 発表になると守りに入っちゃうかなって思ったけど、みんな割と攻めの姿勢で芝居をしていたんで、それはよかったですね。

武居 自分のグループでも、稽古では言っていなかったことを発表のときは言っていたり。このシーンはこういうふうにしたいんだっていうのをちゃんと聞いていて、自分ならこうかなっていう言葉でやっていた。恐れちゃうとできないと思うんですけど、「失敗してもいいや、やってみよう」って感じだったのかなって思います。

細川 コミュニケーションを目的としてつくってはいないけれど、11歳から70代までの人が垣根なく認め合い、みんなのやることをちゃんと見守っていた。つまらないとか下手だとかじゃなく、うまくなくてよくて、間違ってもいいって認め合える場所になれているんだなあ、だからこうやって発表できるんだなあ、すごくいい時間だったなあっていうのを、振り返って思います。
例えば、年下の子が言うことって認めづらかったり、こっちのことなんて理解できないでしょってなりがちだけど、みんな理解しようとお互いが思っていて、そういう環境になっていた。それが宝ものだし、劇場があってできたことだなあって思いました。

山内 たぶん、今日はじめて来て見る人より、積み重ねてきて見ているから余計に、ちょっとしたことがおもしろかったり、「ああ」って思うところがあったのかな、と。その5回がすごく濃いものだったんだなあということを改めて思いました。

細川 それこそ5回でって言ってくださったからこそ、タームを分けて目標を設定して、最後この状態で見てもらうっていう設計ができた。連続していたことがやっぱり重要だったんだろうなって思います。

草光 週ごとに間が空いていたこともよかったんでしょうね。「日常のなかでいろんなことを思い出したり、あの人はこんなこと話していたなってことがいっぱいあったよ」っていう話をさっき聞いて。そういう時間って、すごくおもしろい。

五味 高校生は高校生なりのおもしろさを見つけていたし、年配の方はその方なりのおもしろさを見つけていて、それが融合していた。それは、コミュニケーションをとって仲良くなって、っていう時間をとったこともあるのかなって、すごく感じました。みなさんの感想のなかにも「みんなが集う場所になっている」っていうのがあって、「演劇」とか「表現」っていう以前に、人と人とがふれあうっていうことがあった。本当にランポンさん効果。ありがとうございます。

――昨日、今日と「ここ楽しいから、もっとこうやろう」っていうような「本気の稽古」が少人数ごとにされていて、こういう体験ってなかなかできないなあ、と見ていて思いました。そこからみなさんの「欲」みたいなものが引っ張りだされて、発表でちょっと変わってきているのかなあ、と。

堀田 ぼくのチームも年齢差はだいぶあったけれど、少人数だから、どんな人か知りたいなって「どう思う?」って投げかけたり、話せたり、声を聞いたり、言葉では受け取れない部分のコミュニケーションもできたのかなって。うまくまとめられないですけど。

細川 発表が「やってきたことを間違えないでやる」じゃなかったのが、とてもいいことでしたね。今、新しくここでやってみるっていうのをみんながやっている、というか。なかなかそうならないんだよなあ、でも本番もほんとはそうあるべきだなあって。ぼくらは明日から『カメレオンの陽気なキャラバン』が始まるので、毎日同じ演目をやるんですよね、子どもたちの前で。毎回これぐらい新しくやろう……って(笑)、思いましたね。

五味 ランポンさんたちの引き出しの多さにはびっくりしちゃいました。

草光 引き出しというよりは、みなさんそれぞれ持っているものがあって、どこが舞台上でおもしろくなるかなっていうのをやっている感じかな、と。舞台ってすごく不思議で、舞台上の人の、だめなところが見えれば見えるほど愛おしくなってくる。あの人のいいところを見つけたっていう気持ちにもなるし、自分自身も認められるような気にもなるし。あと、無理してないんですよね、役で。ふだんとかけ離れた役をやっていないっていうのがまた、おもしろかったですね。

――こうして発表をして、「この部分がおもしろかった」「もっとこうしてみてもいいかも」ってみんなで話して……という、《みつけかた》までを体験した今回でしたが、ここから「もっとおもしろいお芝居になるぞ」っていう《つくりかた》が始まる……

細川 例えば、別の2人でやってみるとか、こっちでしゃべっていた話を別のところに移してしゃべってみるとか、やりながらどんどん発想して変化をしながら、いっぱいつくって、稽古して、やっぱりだめだ、いいねっていうのをしていきますね、ここからは。

武居 最後に、この時間を体験していない外の人が今日の発表を見たら、役者さんじゃないのにすっごいお芝居してたね、演じたねって、たぶん思うと思うんですよ。本人たちは演じた、お芝居をした、セリフを言ったっていう気がないまま、でも立派に、ぼくらと同じ演技をしていた。はじめは「お芝居なんて」っていう人もいたと思うんですけど、気づいたらみんなすごいお芝居していたよっていう。それは「しめしめ」だなって思いますね。


2025/03/15

「カメレオンのみつけかた」第3週-① お話を立ち上げてみよう

★シアターランポンの演劇ワークショップ
『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第3週-① お話を立ち上げてみよう

・日時:2025/3/15(土)13:30~16:30
・会場:茅野市民館 アトリエ
・講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司、草光純太、堀田康平
・参加者:18名
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全5回のワークショップも、いよいよ今日と明日が最終週になりました。
今週は「お話を立ち上げてみよう」。これまで見つけた芝居の種を面白がって演じてみる、最後のちょっとした発表会に向けて、今日・明日は稽古を進めていきます。

●準備運動もささっと手早く

今日は稽古の時間をたくさん取るので、始めの準備運動も手早くささっと済ませました。

(先週やった、同時に3つの“道”をやってみるゲーム。
手慣れてきたのか、今週は混乱も少なくさくっと!)

●何組かが、ちょっとお芝居をお試し

早速、ワークがスタート。武居さん・細川さんからの指名で、何組かが芝居をちょっとお試しでやってみました。

まずは1組目。卒業式の後の教室で、担任の先生から生徒へ最後の話をする設定で、お話を作っていきます。

(先週と同じく今週も、箱から名詞を3枚引いて、
話の中に即興でこの名詞を入れていきます)

生徒みんながいる教室に先生が入ってきて一言、「みんな、目出し帽は取ってくれる?…」から始まり、学園祭の思い出も振り返りながら、「いいクラスでした」とお話を進めます。

1回やってみた後、面白い部分をさらに膨らませていけるように、細川さんや武居さんよりコメントを受けて再度トライ。「これから巣立っていく生徒に、大人の先輩として、何を伝える?」「目出し帽とかを全員で揃えたりしちゃうような、そういう子たちのクラス。目出し帽も逆に感動的になるようなクラスかもしれない」…
新しく引いた単語を頑張って入れつつ、「目出し帽」の要素を残しつつ(!)、やってみました。

(生徒役の人も、先生の話にうなずいたり笑ったり。
学校生活最後の教室の雰囲気が漂います)

(先生からの話の最後には、サプライズで生徒からハグ)

2組目は、喫茶店に集まってお喋りしている3人の女性。
真ん中にいる女性がテレビで量子力学を知り、他の友人に、「量子力学ってすごいのよ!」とお話していく…。

(話す前に、引いた3つの名詞を確認。どうやって量子力学を力説していく…?)

「麦畑を前に、魔女が手でクッとすると米に、今度は手をピッとするとライ麦になる、そういうものなのよ、量子力学って…」と、話している人の身振りと声色、聞いている人の「?」「うんうん」な表情が、話の面白さをさらに引き立てていくようでした。

(魔女が手をこうやると、麦がお米になる?!
分からないような説明なのに、「わかるでしょ?」と話を進めていくのが面白かった!)

3組目は、ばぁばの家に来た孫が、ごはんを食べ終わった後に「ばあばとじいじは、なんで結婚したの?」と聞くシチュエーション。本当のことを答えたくないばぁばは、答えをはぐらかそうとして、作り話でごまかそうとするけれど…?

(「太平洋でしらすを見つけるみたいな、しらす婚」と話して乗り切ろうとするばぁば(左側)と、「ちゃんと話して!」と本当のことを聞こうとする孫(右側))

4組目はドライブデートの2人、男の子の方からロマンチックな話をしている……。最後には女の子の方から、「犬としか話さないお父さん」の話をし始める。

(これまでも、卒業式後の告白とドライブデートをやってきたペア。
引いた名詞を使いながら、ロマンチックに語りました。)

ここまでやってみたところで、一旦休憩タイム……

●いよいよ、稽古へ…!

細川さん&堀田さんのグループ/武居さん&草光さんのグループ のそれぞれに振り分けられて、最後の発表に向け、芝居の稽古がスタート。

(どっちのグループで稽古をする?振り分け発表の時間は、ちょっとドキドキ)

細川さん側のグループは、全員での芝居の稽古からスタート!
殺人事件が起きた洋館。名探偵によって、館の中の人々が集められる(館の女主人、遺産狙いのぼんくら息子、旦那を殺された未亡人と子どもたち、警部…)。そこで、名探偵の推理が始まる……。という芝居です。

(🕵名探偵の名推理、どんな事件で犯人は誰……?)
(名探偵コナンや金田一少年の事件簿、のイメージで……)
(最後に、名ゼリフ「さすがね、名探偵さん…」の、館の女主人)

名探偵の推理の中身は、明日の発表でのお楽しみ!このあとも、さらにグループを分けてそれぞれの稽古を続けます。


2人で「高い猫」の台本を読んでいきます。公園で飼い猫を探すおじさんと、それを見て一緒にお手伝いをしようとする女性、の芝居🐈

(どこらへんに茂みがあって、猫を探す?
「ハチ~、ハチ~」と猫の名前を呼びかけます)

「全く台本通りのセリフでなくてもいい、相手のことを見て、相手と話をして、自分が話したいように話していく」とアドバイスを受けました。
台本の流れを押さえておいて、細かい言い回しとかが台本と違ってもいいから、相手の人と会話をする。誰に話しかけているのかを意識しつつ、猫を探しながら、会話の距離感を掴もうと繰り返し練習しました。


今日の前半でやってみた、「ばぁばと、結婚の理由を聞く孫」の2人組。同じ設定で、さらにアドバイスを受けながら話を作っていきます。

(堀田さん側のグループでも、みんなであれやこれや稽古中)



武居さん側のグループ。草光さんと武居さんのアドバイスを受けながら、それぞれ順調…??


1時間以上も稽古を続けていましたが、集中していると時間が経つのが本当に早い💦
あっという間にワークの終了の時間になりました。
他のグループの芝居は、明日の発表でのお楽しみ!いよいよ明日が、最終回です。


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\カメレオンのうらばなし/

あっという間の最終週。
「お話を立ち上げてみよう」の1日目を、
講師の武居さん、細川さん、
アシスタントの草光さん、堀田さんと
振り返りました。
活動を見守るサポートCの五味さん、
参加者でブログ担当スタッフの山内さんも
感じたことを共有しました。

 

――いよいよ、チームに分かれてお芝居してみる段階にきました。それぞれどんな様子でしたか?

草光 ぼくのところは前回即興でやった「量子力学」と「ドライブデート」で、もっと関わりが持てるように設定を付け足したり、しゃべりやすくしようかな、とやっていました。片方ずつ交代でやっていたんですけど、休憩したとき2チームでいろいろ感想を言い合っていて、すごく能動的に見てくれていた。そこから新しいことが出てきたりして、そういう相互作用みたいなものもおもしろいなあと思いましたね。

細川 ぼくは「じいじとばあば」と「高いねこ」、あと「名探偵あっすー」というのをつくりました。
例えば、最年少のお子さんには話す方と聞く方のどちらがいいか意思を聞いて、そのやりたいほうのなかで、彼女のおもしろさと良さみたいなのが出たらいいなっていうことをプラスして組み上げてみたり。自分がどう見られるか意識がいきやすくなってしまう人には、台本を使ってしっかりお芝居の入口の稽古をして、見ている側にとっては過剰な自意識みたいになってしまうところを取りはらって、素敵なところが出てくるようにやってみました。
あとは、2週目に来れなかった人がいたんですけど、1回目にやっていたように人のお話をしゃべるのを、みんなが楽しめるゲームみたいな設定でできないかなと思って、全員に役を振って……というのをやりました。ある意味、初回からずっと参加しているからこそ手を出せるっていうところに特化してやっていた感じですね。

堀田 今回から参加させてもらったんですけど、最初にみんなの前でやっていた「贈ることば」で、みなさんのポテンシャルというか、それにほんとびっくりして、「あれ、ぼくやる必要あるのかな」っていうくらい(笑)良い意味で、「すごいなあ」って思いました。
その後分かれたところでは、ぼくは2つのグループ「贈ることば」と「遅刻の理由」を担当しました。片方のグループと話して「じゃあ、やってね」って言って、またもう片方とも話して……という進行をしていたんですが、もうちょっと「こうしたらいいよ」って投げかけをできたらよかったかな、と思っていたんです。でもやっているうちに「じゃあ、わたしたちもそっちのグループ見るよ」って協力して、能動的にやってくださって、今までの積み重ねもあるのかなあ、いい方たちだなあって(笑)。いやほんとに素敵だなあと思いながら、やっていました。

武居 ぼくのチームは、雨宿りの傘のお話と、もうひとつ「山に登ってバーベキューしたらオスカルさんとすれ違った」っていう「オスカルさんとすれ違った」の奇妙さで何かできないかなって、それでつくらせてもらったんです。全然何も思いついてなかったんですけど。そしたらね、もう全っ然できなくて(笑)、めちゃくちゃ本気で稽古しました。
けっこう感覚的なお芝居をつくっちゃうっていうのもあるんですが、それを共有するっていうか、まだぼくも見つかっていないから、やっている人は「すいません、これ、何がおもしろいんですか…」(笑)、見ている人は「これは何をひたすらやってるんですか…」っていう目があって(笑)。でもすごくありがたかったのは、「次ちょっとこうしてみて」「こんなセリフ言ってみて」って、口立てで試していくのにすごく反応してくださって。で、ぼくのなかの答えが見えてきて「こういう話はどうですか」って言ったとき、みんな「?(はてな)」から「あー!それなら納得できるかもー」って、突破口が見えた。「雨宿り」のほうは全然できなくて、ラスト10分で「こういうこといいます、こういうこといいます、明日考えておいてください」って(笑)。でも、みんなに見てもらうときの心づもりというか、「わたしたちはこういうおもしろさを持ってやる」っていうところまでいって、ああ、いい稽古の日だったな、と思いました。

五味 わたしはいつも参加したくてウズウズしていたんですが(笑)、今日はランポンさん4人がそれぞれつくっていくところを見られるという「おいしさ」みたいなものがありました。稽古のすすめかたも具体的だったり感覚的だったり、それぞれ違うところを見させてもらって、ここからどういうふうに芝居にしていくのかな、もっと知りたいなって思っちゃいました。

――参加していてどんなことを感じましたか?

山内 わたしは、先週までの1個1個のワークがすごく楽しくて、空気感とか感覚が積み上げられてきたうえに、そこでやってきたことが組み合わされて、人と一緒にやる、つくってみるってなっていて、それが楽しいなあって感じながらやっていました。

武居 稽古しながら「これってすごいことだな」って思ったのは、例えば今日会って、ああいう稽古をしたら、たぶん伝えるのにもっと時間がかかったと思うんです。でも、3日間でああいう時間を過ごしてきて、共通言語というか、感覚のことというか、「こうなんです」っていうと「ああ」ってなる。そういう風にはすぐにはなれないじゃないですか。それが生まれているのが、すごくいいなって。

草光 姿勢が、なんというか上がってるんですよね。

武居 お話の内容でおもしろいんじゃなくて、その人が魅力的だったり、なんだかわからないけど素敵っていうことを浴び続けてきているから、自分もそういうものをやってみようっていう姿勢になるっていうか。

細川 ぼくのところでも、どう見えるか意識しちゃう人が、今日途中でほんとに「きた!」っていうときがあって。「今の超よかった!」って言ったらすっごくうれしそうで、ああ、よかったなあって。自分がやる方のことから、聞くこととか、相手を知ることに意識がいって、相手が反応してくれることのおもしろさを、たぶん途中でつかんだと思うんです。そこを、もし気づいていただけたらうれしいなって思いました。

山内 ちょっと大変そうかなっていうところから、雰囲気も、話している感じも、表情も全然違ってきて、生まれ変わったのかなあってくらい。びっくりしちゃいました。

細川 で、今度また「見られる」ときになると、もう一度自意識が出てくるから、それとの闘いなんですけど、あのとき一緒にやった感覚が残っててくれれば、それがどこかで出るんじゃないかな、と思いますね。

五味 ダンスや音楽、子どもたちに向けたもの……といった、いろいろな活動をやってきているなかで、「演劇」ってやっぱりちょっとハードルを高く感じられちゃうんですよね。今回ここに参加してくれた人のなかでも、「演劇」いいねって思ってくれる人が増えるとすごくいいなと思います。


2025/03/09

「カメレオンのみつけかた」第2週-② お話を探そう

★シアターランポンの演劇ワークショップ
『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第2週-② お話を探そう

・日時:2025/3/9(日)13:30~16:30
・会場:茅野市民館 アトリエ
・講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司
・参加者:19名
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●今日はジェスチャーゲームからスタート

昨日のワークショップから講師は変わらずで、早速ワークショップがスタート。
じゃんけんで勝った人/負けた人の2つに分かれて、2チーム対抗でのジェスチャーゲームです。

(奥側がチーム青春、手前側はチームサンキュー)

ジェスチャーをする人は声を出したり文字を書こうとしたりはNGで、お題をジェスチャーでチームの人に伝え、そこからお題を当てる早さを競います。

 ・細川さんから、ジェスチャーする人にお題を伝えます。

 →ジェスチャーする人は、自分のチームに戻ってジェスチャー。チーム全員で、何を表しているかを当てていきます。

 →チームの誰かがお題を当てられたら、ジェスチャーをしている人が「正解」と教えて、チーム全員で挙手。

 
(ちなみに今回も、厳正なジャッジは五味隊長✨)

まずは練習問題から、お題は「動物」で出されます。正解はクロサイやコウテイペンギンなど…思ったよりお題が難解でした💦


本戦に入る前に、チームごとに作戦会議をしました。
本戦最初のお題は「食べもの」シリーズ。

(両チームにアドバイスをする武居さん)

(ジェスチャーをよく見ようと、皆が段々近づいて、気がつけば前のめり状態に)

お題:「食べもの」シリーズではチンジャオロース・ちゃんこ鍋など5問が出題、チーム青春が優勢でした。
もう一度作戦会議を挟んで、次の5問のお題は「映画のタイトル」シリーズ。映画は、人によって見たことのあるないも様々で、ジェスチャーをする人が、その映画を知らないこともあります。タイトルのイメージからジェスチャーしたり、映画の内容をジェスチャーしたり、分からないなりにジェスチャーをしてみる・当ててみるでトライ。

(ジェスチャーをする2人にこんな年の差も!
ちなみにこの時のお題は「ローマの休日」。どのように伝える?)

(映画を知らないので、タイトルの「休日」からジェスチャー?)

(映画を見たことがあるので、内容をジェスチャー。アン王女や手紙をジェスチャーしたり、写真は、真実の口に手を入れる占いのジェスチャー)

お題:「映画」シリーズは、チームサンキューが優勢。
また作戦会議を挟み、最後はお題:「人物」のシリーズで5戦します。存命の人物か故人か、日本の人か海外の人か、だけでも幅広くなり、ジェスチャーの切り口もますます広がります。
性別?職業?名前?お題の人物が誰なのかさっぱり分からない! ジェスチャーをする人も当てる側も難儀して、両チームなかなか正解が出ず、長時間ジェスチャーを続ける問題も出てきました。
チームの中でも、ジェスチャーが上手い人やインスピレーションが早い人がそれぞれ分かってきたり、珍プレー好プレーも出つつ、これまでのワークショップでやってきた「伝えようとする」「よく見ようとする」姿勢で、集中してワークに取り組めた感じがしました。

●休憩の間に…

昨日、「名詞」を3つ考えてくる、という宿題が出ていました。
休憩の間に、メモ用紙1枚に1名詞ずつ書き、見えないように四つ折りにして、箱に入れておきます。何を書いたのかは、他の人には秘密です。

●3つの名詞を入れながら、話をしてみる

箱の中から名詞を3枚を引いて、そこに書かれている3つの単語を入れながら、話を作っていきます。
ちなみに紙の中身は、「徳島」「渋谷」といった地名から、「猫」「駅」「トンネル」など一般的なもの、「レムリア文明」「ジャンバラヤ」など聞きなじみのあまりない単語まで、幅が広い!


引いた単語を見て、とりあえず話を始める。話をしている内に、口から出ちゃった言葉はそのままに、その場に身を任せて話を続けてみる。
聞いている人は、話を聞きながら何の単語を引いたのか考えてみたり、話の中で印象に残った部分を見つけてメモしておきます。


すらすらと話される方がいたり、引いた単語に悩みつつ、探り探りの口調で奇想天外の話をし始める方もいたり。
話の流れがよく分からない(たぶん話している本人も、話がどうなっていくのか分からずに話している)でも、話がどうなる?次はどう展開していく?と段々前のめりになって、口から出て来る次のワードを楽しみにしながら、話を聞いていました。


「山で1人でジンギスカンをしていたらオスカル様が通りすぎた」、
「ピータン…ピーマン?(「ピータン」の紙を引いたけれどそれが何なのか分からず、普段なら出ないような言い間違えが咄嗟に出てきたよう!)」、「高い猫が好き」、「猫を踊らせようと思って、ミシンでドレスを作る」「ラインスト―ンのついた綺麗な傘は雨の日には使えなかった」
…話の全体の流れも、話の中で不意に出てくる言葉も、面白い。

途中からは、話をする人に設定が加わってきました。
「怖い話をします…から話し始める(シーラカンス展に行こうと電車で出かける…話)」、「桃太郎のような、皆が知っているような昔話をするように話す(光る鹿から一晩中目が離せなかったおじいさんの話でした)」、「ドライブデートの車内で、ロマンチックに話をする」など…

(遅刻してきた生徒に対して、写真右側の先生が遅刻の理由を聞くと、
嘘みたいな話をし続ける、という設定)

話している本人は真剣、でも話の内容が設定とズレていたり、みんな大笑いでメモするどころじゃなくなりました。

●最後に、感想タイム

何人かが話す人をやってみた後に全体で、話を聞いて思ったことや、話の中で面白かった部分など、感想を共有。武居さんや細川さんも交えて、話を聞いていて感じたことを話していきました。


・「人力車が飛ぶわけがない」など、机に向かって脚本を書いているやり方だと出なさそうな言葉が話の中で出て来る、こういうふうにポロっと出て来る言葉が面白い。
・猫の話で思い出した。知合いの家から2匹のうち1匹の猫をもらったが、自分のもらった猫の方がシャム猫とわかった後、取り替えてくれと言われた。でももう猫を可愛く思ってたから、取り替えには応じなかった。
・この話は何の3つの単語を引いていたの?
・遠く旅行に行ったときに、「朝は家にいたのに、今はここにいるのが変な感じ」の感覚は分かる気がする。
・「面白い話なんだけど…」と言って始まったけれど、神社の階段の途中でワニのぬいぐるみが落ちていた…と続いていった、そんなシチュエーションだと怖い話になりそう。
・犬は噛むけれど猫はそんなに噛まないから猫の方がいいかな…と言ってたけれど、猫も噛むよ~。

…というような、話の聞き方もそれぞれな感想が出てきていました。
いろんな人の“面白がる視点”を自分ももらって、もっと面白く話を聞けそう!な気持ちになりました。

ここで、今週のワークショップは終了。いよいよ来週が最後の週になります!


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\カメレオンのうらばなし/

第2週「お話を探そう」その2。
講師の武居さん、細川さんとの振り返りを、
活動を見守るサポートCの五味さん、
参加者でブログ担当スタッフの山内さんとともに、
語り合いました。



――さっそく、引きあてた3つの言葉でお話をする場面の話を聞きたいのですが、実際にやってみてどうでしたか?

山内 やりながら「3つ、入れなきゃ」って頭の片隅にあるんですけど、話していくうちに、それとは別に「あ、こういう方向にしゃべりだしちゃう」ってなって。わたしが引いたのは「駅」と「トンネル」と「大都会のスタバ」だったから、割と「行き道」の話だなーって。でも、行き道の話で単語3つを入れたら簡潔に終わるっていう感じじゃなくて、しゃべっているうちに話が横道にそれて、「違う違う、お題があったんだ」って思い出したり。話しながら、横道にそれながら、うねうね曲がりながら話しているような感覚があって、ちょっと緊張しました。

――構成などを考えずに、パッと出たものから話しはじめるというのは……

武居 もう、それが肝(きも)ですね。

細川 これを一番はじめにやったのは、俳優だけでお芝居をつくろうっていうときなんです。劇作家がいるっていうのではない方法で、俳優がその場でしゃべったことを俳優が聞くと、お芝居ができるんじゃないかって模索していて。落語の三題噺からとったんですけど、落語じゃないから落とさなくていいよっていうルールで。
これって、話さなきゃいけないことがあるから、話すんですよね。なんでもいいからって言われるより、この3つの言葉をばれないように入れて、話してくださいっていう。で、大抵そのワード自体はテーマにならない。たとえば「大都会のスタバではしゃぐ」の「はしゃぐ」のところ、そこがおもしろいですよね。そういう横道のところ、曲がったところを拾っていく。

武居 その言葉にいくための過程がおもしろい。そこにいくために口火を切って話し出す、その部分がおもしろかったり、単語から単語にいくための変なストーリーが、なんかおもしろい……ってなることが多いですね。
ぼくら役者の集団だと同じような生活をしているから、出てくるものがそんなに新鮮じゃなかったり、ドキッとしなかったりするんですけど、今日参加しているみなさんはそれぞれ人生が違うし、生活も違うから、出てくるものの多様性がほんとすごくて、魅力的。役者じゃ出てこない話、感覚だなってすごく驚きました。

――話を聞いて、おもしろいところがあったらメモしてっていうのも、また見方、聞き方が違ってきますよね。みなさんが拾って書いたメモも読んでみたいって思いました。

武居 確かに。絶対ぼくらと違うところをおもしろいと思っているでしょうね。

山内 話を聞いていて、「シーラカンス」とか「なんとか文明」とか、日常ではそんなに使わない単語を入れて、探り探り話している感じとか、「高いねこが好き」みたいに、本人はそうじゃないだろうけれど、ほんとうにそれが存在しているみたいにリアルに感じられたのも、おもしろかったです。

武居 大きな勘違いもおもしろいですからね。以前、ヘミングウェイが浜辺でしゃべるシーンをやっていて、なぜか女性だと思っちゃって「わたしはヘミングウェイよ」って(笑)。勘違いしている人なのか、ヘミングウェイって思い込んでる女性なのか、わけのわからないシーンになって、こっちは真剣にやってるんだけど、みんなゲラゲラ笑ってて(笑)。

細川 それこそ、劇作家が書くわけない話。そういうところから発想する、という。
こういったワークを高校生なんかとやるとき、まずは「わるいお客さん」「いいお客さん」を演じてみるっていうのを先にやるんです。そうすると、いいお客さんってどんなふうか想像できるようになっているから、お話をするところ、要はつまらない話なんだけど、それを楽しむことができる。「楽しませてよ」じゃなくて「楽しむ」状態をつくるんですけど、今日はそれをやらなくていいなって。けっこうみなさん前のめりで。

武居 ここに来るところから楽しみにしているっていうか。拾おう拾おうって。
すごく引いて見てみると、聞いている人たちがすでに演じているじゃないですか、これ。嘘の話をほんとのように聞いているっていう参加を、もう演じてるんですよ。「嘘だってわかってるけどあなたにとってのほんとの話として聞きましょう」って。「はあ?」ってならないで「ほうほう、それで」っていう合いの手になる。もう演劇ゲームに参加しているんで。

五味 先週や昨日のことがなくて、「3つのワードを入れて話して」って言われても、今日みたいにはならないですよね。

武居 そうですね。初日にほんとの自分の話をして、それを人に渡したときにもうすでに自分にとっては嘘なんだけど、でも、人にとってはほんとの話。1週目で、ほんとと嘘の境い目を徐々に崩していきつつ、2週目はそういったこだわりはもうよくて、起こっていることを楽しむっていう。そこに入っていけたのかなって気はしますね。

――昨日、人と人の間にうまれるものを見ているっておっしゃっていましたけど、お話に入っていく感じがありましたね。はっ!と気づいたり、え?って思ったり、ある意味能動的に気づくようになっていく感じもありました。

武居 そういう、ある意味一番いい状態でぼくがお芝居を見ているときは、リアリティがあるかどうかっていうより、たとえ嘘の表現だったとしても「この部分おもしろい!」「その感覚わかる!」ってとらえる自分になっていて、見たときの感動がすごいんです。ちょっとわからないとか、難しいなって思ったとしても、別のおもしろいところに脳が働く。だから、あの状態でお芝居を見たらもっと楽しいんじゃないかな。

細川 「もうわかんない」ってあきらめている人が客席にいると難しいんですよね。最初に「わかんない」って壁をどう崩したら伝わるか。だからお芝居ってオープニングをがんばるじゃないですか。

武居 その世界に入っていく、ね。本来、おもしろがりに来ているはずなんですけどね。

五味 日常生活のなかでも、今まで見過ごしてきたようなことも「おもしろい」って感じて、日々豊かになりそうですね。

武居 思い出した。ぼく、ついこの前までお芝居をやっていて、役者だけだったからまたちがう脳で一生懸命やっていたんですけど、帰ってきたら家の駐車場の横にあるちょっとした隙間に、うんちがあったんですよ、とても大きな……。「え!最悪!」ってもう嫌悪感でいっぱい。でも何日かして「ああ、おれの心いま豊かじゃないな」って。今のワークをやっているような状態で見つけていたら、もっといろんなことを想像したけど、そっちの脳がなくなっていた。だめだ戻さなきゃって思って、で、「どういうことだろうー!」ってぶわーっと広がりだして、ようやく「よし、もうカメレオンのみつけかた行ける!」って思って、来ました(一同笑)。