★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』第2週 お話を探そう ― ②
●今日はジェスチャーゲームからスタート
・細川さんから、ジェスチャーする人にお題を伝えます。
→チームの誰かがお題を当てられたら、ジェスチャーをしている人が「正解」と教えて、チーム全員で挙手。
●休憩の間に…
●3つの名詞を入れながら、話をしてみる
●最後に、感想タイム
\カメレオンのうらばなし/
第2週「お話を探そう」その2。
講師の武居さん、細川さんとの振り返りを、
活動を見守るサポートCの五味さん、
参加者でブログ担当スタッフの山内さんとともに、
語り合いました。
――さっそく、引きあてた3つの言葉でお話をする場面の話を聞きたいのですが、実際にやってみてどうでしたか?
山内 やりながら「3つ、入れなきゃ」って頭の片隅にあるんですけど、話していくうちに、それとは別に「あ、こういう方向にしゃべりだしちゃう」ってなって。わたしが引いたのは「駅」と「トンネル」と「大都会のスタバ」だったから、割と「行き道」の話だなーって。でも、行き道の話で単語3つを入れたら簡潔に終わるっていう感じじゃなくて、しゃべっているうちに話が横道にそれて、「違う違う、お題があったんだ」って思い出したり。話しながら、横道にそれながら、うねうね曲がりながら話しているような感覚があって、ちょっと緊張しました。
――構成などを考えずに、パッと出たものから話しはじめるというのは……
武居 もう、それが肝(きも)ですね。
細川 これを一番はじめにやったのは、俳優だけでお芝居をつくろうっていうときなんです。劇作家がいるっていうのではない方法で、俳優がその場でしゃべったことを俳優が聞くと、お芝居ができるんじゃないかって模索していて。落語の三題噺からとったんですけど、落語じゃないから落とさなくていいよっていうルールで。
これって、話さなきゃいけないことがあるから、話すんですよね。なんでもいいからって言われるより、この3つの言葉をばれないように入れて、話してくださいっていう。で、大抵そのワード自体はテーマにならない。たとえば「大都会のスタバではしゃぐ」の「はしゃぐ」のところ、そこがおもしろいですよね。そういう横道のところ、曲がったところを拾っていく。
武居 その言葉にいくための過程がおもしろい。そこにいくために口火を切って話し出す、その部分がおもしろかったり、単語から単語にいくための変なストーリーが、なんかおもしろい……ってなることが多いですね。
ぼくら役者の集団だと同じような生活をしているから、出てくるものがそんなに新鮮じゃなかったり、ドキッとしなかったりするんですけど、今日参加しているみなさんはそれぞれ人生が違うし、生活も違うから、出てくるものの多様性がほんとすごくて、魅力的。役者じゃ出てこない話、感覚だなってすごく驚きました。
――話を聞いて、おもしろいところがあったらメモしてっていうのも、また見方、聞き方が違ってきますよね。みなさんが拾って書いたメモも読んでみたいって思いました。
武居 確かに。絶対ぼくらと違うところをおもしろいと思っているでしょうね。
山内 話を聞いていて、「シーラカンス」とか「なんとか文明」とか、日常ではそんなに使わない単語を入れて、探り探り話している感じとか、「高いねこが好き」みたいに、本人はそうじゃないだろうけれど、ほんとうにそれが存在しているみたいにリアルに感じられたのも、おもしろかったです。
武居 大きな勘違いもおもしろいですからね。以前、ヘミングウェイが浜辺でしゃべるシーンをやっていて、なぜか女性だと思っちゃって「わたしはヘミングウェイよ」って(笑)。勘違いしている人なのか、ヘミングウェイって思い込んでる女性なのか、わけのわからないシーンになって、こっちは真剣にやってるんだけど、みんなゲラゲラ笑ってて(笑)。
細川 それこそ、劇作家が書くわけない話。そういうところから発想する、という。
こういったワークを高校生なんかとやるとき、まずは「わるいお客さん」「いいお客さん」を演じてみるっていうのを先にやるんです。そうすると、いいお客さんってどんなふうか想像できるようになっているから、お話をするところ、要はつまらない話なんだけど、それを楽しむことができる。「楽しませてよ」じゃなくて「楽しむ」状態をつくるんですけど、今日はそれをやらなくていいなって。けっこうみなさん前のめりで。
武居 ここに来るところから楽しみにしているっていうか。拾おう拾おうって。
すごく引いて見てみると、聞いている人たちがすでに演じているじゃないですか、これ。嘘の話をほんとのように聞いているっていう参加を、もう演じてるんですよ。「嘘だってわかってるけどあなたにとってのほんとの話として聞きましょう」って。「はあ?」ってならないで「ほうほう、それで」っていう合いの手になる。もう演劇ゲームに参加しているんで。
五味 先週や昨日のことがなくて、「3つのワードを入れて話して」って言われても、今日みたいにはならないですよね。
武居 そうですね。初日にほんとの自分の話をして、それを人に渡したときにもうすでに自分にとっては嘘なんだけど、でも、人にとってはほんとの話。1週目で、ほんとと嘘の境い目を徐々に崩していきつつ、2週目はそういったこだわりはもうよくて、起こっていることを楽しむっていう。そこに入っていけたのかなって気はしますね。
――昨日、人と人の間にうまれるものを見ているっておっしゃっていましたけど、お話に入っていく感じがありましたね。はっ!と気づいたり、え?って思ったり、ある意味能動的に気づくようになっていく感じもありました。
武居 そういう、ある意味一番いい状態でぼくがお芝居を見ているときは、リアリティがあるかどうかっていうより、たとえ嘘の表現だったとしても「この部分おもしろい!」「その感覚わかる!」ってとらえる自分になっていて、見たときの感動がすごいんです。ちょっとわからないとか、難しいなって思ったとしても、別のおもしろいところに脳が働く。だから、あの状態でお芝居を見たらもっと楽しいんじゃないかな。
細川 「もうわかんない」ってあきらめている人が客席にいると難しいんですよね。最初に「わかんない」って壁をどう崩したら伝わるか。だからお芝居ってオープニングをがんばるじゃないですか。
武居 その世界に入っていく、ね。本来、おもしろがりに来ているはずなんですけどね。
五味 日常生活のなかでも、今まで見過ごしてきたようなことも「おもしろい」って感じて、日々豊かになりそうですね。
武居 思い出した。ぼく、ついこの前までお芝居をやっていて、役者だけだったからまたちがう脳で一生懸命やっていたんですけど、帰ってきたら家の駐車場の横にあるちょっとした隙間に、うんちがあったんですよ、とても大きな……。「え!最悪!」ってもう嫌悪感でいっぱい。でも何日かして「ああ、おれの心いま豊かじゃないな」って。今のワークをやっているような状態で見つけていたら、もっといろんなことを想像したけど、そっちの脳がなくなっていた。だめだ戻さなきゃって思って、で、「どういうことだろうー!」ってぶわーっと広がりだして、ようやく「よし、もうカメレオンのみつけかた行ける!」って思って、来ました(一同笑)。