2025/03/09

2025/3/9 演劇WS「カメレオンのみつけかた」 ‐第2週 お話を探そう ― ②

★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』第2週 お話を探そう ― ②

日時:2025/3/9(日)13:30~16:30
会場:茅野市民館 アトリエ
講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司
参加者:19名
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●今日はジェスチャーゲームからスタート

昨日のワークショップから講師は変わらずで、早速ワークショップがスタート。
じゃんけんで勝った人/負けた人の2つに分かれて、2チーム対抗でのジェスチャーゲームです。

(奥側がチーム青春、手前側はチームサンキュー)

ジェスチャーをする人は声を出したり文字を書こうとしたりはNGで、お題をジェスチャーでチームの人に伝え、そこからお題を当てる早さを競います。

 ・細川さんから、ジェスチャーする人にお題を伝えます。

 →ジェスチャーする人は、自分のチームに戻ってジェスチャー。チーム全員で、何を表しているかを当てていきます。

 →チームの誰かがお題を当てられたら、ジェスチャーをしている人が「正解」と教えて、チーム全員で挙手。

 
(ちなみに今回も、厳正なジャッジは五味隊長✨)

まずは練習問題から、お題は「動物」で出されます。正解はクロサイやコウテイペンギンなど…思ったよりお題が難解でした💦


本戦に入る前に、チームごとに作戦会議をしました。
本戦最初のお題は「食べもの」シリーズ。

(両チームにアドバイスをする武居さん)

(ジェスチャーをよく見ようと、皆が段々近づいて、気がつけば前のめり状態に)

お題:「食べもの」シリーズではチンジャオロース・ちゃんこ鍋など5問が出題、チーム青春が優勢でした。
もう一度作戦会議を挟んで、次の5問のお題は「映画のタイトル」シリーズ。映画は、人によって見たことのあるないも様々で、ジェスチャーをする人が、その映画を知らないこともあります。タイトルのイメージからジェスチャーしたり、映画の内容をジェスチャーしたり、分からないなりにジェスチャーをしてみる・当ててみるでトライ。

(ジェスチャーをする2人にこんな年の差も!
ちなみにこの時のお題は「ローマの休日」。どのように伝える?)

(映画を知らないので、タイトルの「休日」からジェスチャー?)

(映画を見たことがあるので、内容をジェスチャー。アン王女や手紙をジェスチャーしたり、写真は、真実の口に手を入れる占いのジェスチャー)

お題:「映画」シリーズは、チームサンキューが優勢。
また作戦会議を挟み、最後はお題:「人物」のシリーズで5戦します。存命の人物か故人か、日本の人か海外の人か、だけでも幅広くなり、ジェスチャーの切り口もますます広がります。
性別?職業?名前?お題の人物が誰なのかさっぱり分からない! ジェスチャーをする人も当てる側も難儀して、両チームなかなか正解が出ず、長時間ジェスチャーを続ける問題も出てきました。
チームの中でも、ジェスチャーが上手い人やインスピレーションが早い人がそれぞれ分かってきたり、珍プレー好プレーも出つつ、これまでのワークショップでやってきた「伝えようとする」「よく見ようとする」姿勢で、集中してワークに取り組めた感じがしました。

●休憩の間に…

昨日、「名詞」を3つ考えてくる、という宿題が出ていました。
休憩の間に、メモ用紙1枚に1名詞ずつ書き、見えないように四つ折りにして、箱に入れておきます。何を書いたのかは、他の人には秘密です。

●3つの名詞を入れながら、話をしてみる

箱の中から名詞を3枚を引いて、そこに書かれている3つの単語を入れながら、話を作っていきます。
ちなみに紙の中身は、「徳島」「渋谷」といった地名から、「猫」「駅」「トンネル」など一般的なもの、「レムリア文明」「ジャンバラヤ」など聞きなじみのあまりない単語まで、幅が広い!


引いた単語を見て、とりあえず話を始める。話をしている内に、口から出ちゃった言葉はそのままに、その場に身を任せて話を続けてみる。
聞いている人は、話を聞きながら何の単語を引いたのか考えてみたり、話の中で印象に残った部分を見つけてメモしておきます。


すらすらと話される方がいたり、引いた単語に悩みつつ、探り探りの口調で奇想天外の話をし始める方もいたり。
話の流れがよく分からない(たぶん話している本人も、話がどうなっていくのか分からずに話している)でも、話がどうなる?次はどう展開していく?と段々前のめりになって、口から出て来る次のワードを楽しみにしながら、話を聞いていました。


「山で一人でジンギスカンをしていたらオスカル様が通りすぎた」、
「ピータン…ピーマン?(「ピータン」の紙を引いたけれどそれが何なのか分からず、普段なら出ないような言い間違えが咄嗟に出てきたよう!)」、「高い猫が好き」、「猫を踊らせようと思って、ミシンでドレスを作る」「ラインスト―ンのついた綺麗な傘は雨の日には使えなかった」
…話の全体の流れも、話の中で不意に出てくる言葉も、面白い。

途中からは、話をする人に設定が加わってきました。
「怖い話をします…から話し始める(シーラカンス展に行こうと電車で出かける…話)」、「桃太郎のような、皆が知っているような昔話をするように話す(光る鹿から一晩中目が離せなかったおじいさんの話でした)」、「ドライブデートの車内で、ロマンチックに話をする」など…

(遅刻してきた生徒に対して、写真右側の先生が遅刻の理由を聞くと、
嘘みたいな話をし続ける、という設定)

話している本人は真剣、でも話の内容が設定とズレていたり、みんな大笑いでメモするどころじゃなくなりました。

●最後に、感想タイム

何人かが話す人をやってみた後に全体で、話を聞いて思ったことや、話の中で面白かった部分など、感想を共有。武居さんや細川さんも交えて、話を聞いていて感じたことを話していきました。


・「人力車が飛ぶわけがない」など、机に向かって脚本を書いているやり方だと出なさそうな言葉が話の中で出て来る、こういうふうにポロっと出て来る言葉が面白い。
・猫の話で思い出した。知合いの家から2匹のうち1匹の猫をもらったが、自分のもらった猫の方がシャム猫とわかった後、取り替えてくれと言われた。でももう猫を可愛く思ってたから、取り替えには応じなかった。
・この話は何の3つの単語を引いていたの?
・遠く旅行に行ったときに、「朝は家にいたのに、今はここにいるのが変な感じ」の感覚は分かる気がする。
・「面白い話なんだけど…」と言って始まったけれど、神社の階段の途中でワニのぬいぐるみが落ちていた…と続いていった、そんなシチュエーションだと怖い話になりそう。
・犬は噛むけれど猫はそんなに噛まないから猫の方がいいかな…と言ってたけれど、猫も噛むよ~。

…というような、話の聞き方もそれぞれな感想が出てきていました。
いろんな人の“面白がる視点”を自分ももらって、もっと面白く話を聞けそう!な気持ちになりました。

ここで、今週のワークショップは終了。いよいよ来週が最後の週になります!


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\カメレオンのうらばなし/

第2週「お話を探そう」その2。
講師の武居さん、細川さんとの振り返りを、
活動を見守るサポートCの五味さん、
参加者でブログ担当スタッフの山内さんとともに、
語り合いました。



――さっそく、引きあてた3つの言葉でお話をする場面の話を聞きたいのですが、実際にやってみてどうでしたか?

山内 やりながら「3つ、入れなきゃ」って頭の片隅にあるんですけど、話していくうちに、それとは別に「あ、こういう方向にしゃべりだしちゃう」ってなって。わたしが引いたのは「駅」と「トンネル」と「大都会のスタバ」だったから、割と「行き道」の話だなーって。でも、行き道の話で単語3つを入れたら簡潔に終わるっていう感じじゃなくて、しゃべっているうちに話が横道にそれて、「違う違う、お題があったんだ」って思い出したり。話しながら、横道にそれながら、うねうね曲がりながら話しているような感覚があって、ちょっと緊張しました。

――構成などを考えずに、パッと出たものから話しはじめるというのは……

武居 もう、それが肝(きも)ですね。

細川 これを一番はじめにやったのは、俳優だけでお芝居をつくろうっていうときなんです。劇作家がいるっていうのではない方法で、俳優がその場でしゃべったことを俳優が聞くと、お芝居ができるんじゃないかって模索していて。落語の三題噺からとったんですけど、落語じゃないから落とさなくていいよっていうルールで。
これって、話さなきゃいけないことがあるから、話すんですよね。なんでもいいからって言われるより、この3つの言葉をばれないように入れて、話してくださいっていう。で、大抵そのワード自体はテーマにならない。たとえば「大都会のスタバではしゃぐ」の「はしゃぐ」のところ、そこがおもしろいですよね。そういう横道のところ、曲がったところを拾っていく。

武居 その言葉にいくための過程がおもしろい。そこにいくために口火を切って話し出す、その部分がおもしろかったり、単語から単語にいくための変なストーリーが、なんかおもしろい……ってなることが多いですね。
ぼくら役者の集団だと同じような生活をしているから、出てくるものがそんなに新鮮じゃなかったり、ドキッとしなかったりするんですけど、今日参加しているみなさんはそれぞれ人生が違うし、生活も違うから、出てくるものの多様性がほんとすごくて、魅力的。役者じゃ出てこない話、感覚だなってすごく驚きました。

――話を聞いて、おもしろいところがあったらメモしてっていうのも、また見方、聞き方が違ってきますよね。みなさんが拾って書いたメモも読んでみたいって思いました。

武居 確かに。絶対ぼくらと違うところをおもしろいと思っているでしょうね。

山内 話を聞いていて、「シーラカンス」とか「なんとか文明」とか、日常ではそんなに使わない単語を入れて、探り探り話している感じとか、「高いねこが好き」みたいに、本人はそうじゃないだろうけれど、ほんとうにそれが存在しているみたいにリアルに感じられたのも、おもしろかったです。

武居 大きな勘違いもおもしろいですからね。以前、ヘミングウェイが浜辺でしゃべるシーンをやっていて、なぜか女性だと思っちゃって「わたしはヘミングウェイよ」って(笑)。勘違いしている人なのか、ヘミングウェイって思い込んでる女性なのか、わけのわからないシーンになって、こっちは真剣にやってるんだけど、みんなゲラゲラ笑ってて(笑)。

細川 それこそ、劇作家が書くわけない話。そういうところから発想する、という。
こういったワークを高校生なんかとやるとき、まずは「わるいお客さん」「いいお客さん」を演じてみるっていうのを先にやるんです。そうすると、いいお客さんってどんなふうか想像できるようになっているから、お話をするところ、要はつまらない話なんだけど、それを楽しむことができる。「楽しませてよ」じゃなくて「楽しむ」状態をつくるんですけど、今日はそれをやらなくていいなって。けっこうみなさん前のめりで。

武居 ここに来るところから楽しみにしているっていうか。拾おう拾おうって。
すごく引いて見てみると、聞いている人たちがすでに演じているじゃないですか、これ。嘘の話をほんとのように聞いているっていう参加を、もう演じてるんですよ。「嘘だってわかってるけどあなたにとってのほんとの話として聞きましょう」って。「はあ?」ってならないで「ほうほう、それで」っていう合いの手になる。もう演劇ゲームに参加しているんで。

五味 先週や昨日のことがなくて、「3つのワードを入れて話して」って言われても、今日みたいにはならないですよね。

武居 そうですね。初日にほんとの自分の話をして、それを人に渡したときにもうすでに自分にとっては嘘なんだけど、でも、人にとってはほんとの話。1週目で、ほんとと嘘の境い目を徐々に崩していきつつ、2週目はそういったこだわりはもうよくて、起こっていることを楽しむっていう。そこに入っていけたのかなって気はしますね。

――昨日、人と人の間にうまれるものを見ているっておっしゃっていましたけど、お話に入っていく感じがありましたね。はっ!と気づいたり、え?って思ったり、ある意味能動的に気づくようになっていく感じもありました。

武居 そういう、ある意味一番いい状態でぼくがお芝居を見ているときは、リアリティがあるかどうかっていうより、たとえ嘘の表現だったとしても「この部分おもしろい!」「その感覚わかる!」ってとらえる自分になっていて、見たときの感動がすごいんです。ちょっとわからないとか、難しいなって思ったとしても、別のおもしろいところに脳が働く。だから、あの状態でお芝居を見たらもっと楽しいんじゃないかな。

細川 「もうわかんない」ってあきらめている人が客席にいると難しいんですよね。最初に「わかんない」って壁をどう崩したら伝わるか。だからお芝居ってオープニングをがんばるじゃないですか。

武居 その世界に入っていく、ね。本来、おもしろがりに来ているはずなんですけどね。

五味 日常生活のなかでも、今まで見過ごしてきたようなことも「おもしろい」って感じて、日々豊かになりそうですね。

武居 思い出した。ぼく、ついこの前までお芝居をやっていて、役者だけだったからまたちがう脳で一生懸命やっていたんですけど、帰ってきたら家の駐車場の横にあるちょっとした隙間に、うんちがあったんですよ、とても大きな……。「え!最悪!」ってもう嫌悪感でいっぱい。でも何日かして「ああ、おれの心いま豊かじゃないな」って。今のワークをやっているような状態で見つけていたら、もっといろんなことを想像したけど、そっちの脳がなくなっていた。だめだ戻さなきゃって思って、で、「どういうことだろうー!」ってぶわーっと広がりだして、ようやく「よし、もうカメレオンのみつけかた行ける!」って思って、来ました(一同笑)。



2025/03/08

2025/3/8 演劇WS「カメレオンのみつけかた」 ‐第2週 お話を探そう ― ①

★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第2週 お話を探そう ― ①
日時:2025/3/8(土)13:30~16:30
会場:茅野市民館 アトリエ
講師:シアターランポン 武居卓、細川貴司
参加者:18名
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今週の講師は、シアターランポンの武居さん・細川さん。
みんなで円に並んで座って、今回から初参加の方3名も含めて全員で呼び名の確認を手早く済ませた後、早速今週のワークショップがスタートしました。

(講師の武居さんも、今週からワークショップに参加✨)

●まずは、ちょっとハードめな(?)準備運動

最初のワークは頭を使う準備運動、全員で3つの“道”を作って、同時に動かしていく”ことをやってみました。

① 1つ目は、“名前の道”
自分の名前が呼ばれたら、次の人の名前を呼ぶというルールで、その順番を決めておきます。これが1つ目にできた“名前の道”。

(顔を合わせて、名前を呼んでいく)

② 2つ目は、歩いてタッチしていく“道”
自分がタッチされたら、歩いて次の人のところまで行ってタッチ→タッチされた人は、その次の人を探してタッチ→…… でやっていきます。


次にタッチする相手は、先ほどの“名前の道”とは別の人を選ぶので、“名前の道”と違う順番を覚えていかなくてはいけません。

→まずは、2つの“道”を同時にやってみる🔥
タッチされたら次にタッチする人を探す(席の立ち位置も変わっていくので、目線もきょろきょろ)/自分の名前が呼ばれたら、次の人の名前を呼ぶ……それぞれの2つの道を、並行してやっていきます。
タッチに気を取られて“名前の道”を忘れないよう、逆もまた然り。
最初は混乱していましたが段々慣れてきて、2つの道まではまだ何とか大丈夫そう……?

③ 3つ目は、指パッチンの“道”
今度は、指パッチンを次の人(“名前の道”“タッチの道”とは別の人)に回していきます。今度は、ちゃんと渡したい人の顔を見て、指パッチンを渡したことに気づいてもらわないと、順番を次に回すことができない…💦 これが3つ目の道。


→なんと、この3つの道を同時並行で挑戦🔥
タッチを回した、と油断していたら、名前を呼ばれて慌てて次の人の名前を読んだり。他の“道”の様子に気になりすぎて、自分が指パッチンを次の人に渡そうとしても気が付いてもらえず、気づいてもらうまで何度も「渡すよ!」のアピールをしながら動作を繰り返したり……。自分の順番が2つ・3つで同時に回ってくることもあり。お互いに助け合って懸命に、何とか3つの“道”を回し続けることができました!

(写真左側は指パッチンを渡す人/右側は次の人にタッチをしにいく人。
同時に名前も回していっています。)

最初は「難しそう!」と思っても、先週のワークショップで言われた「無理だと思わないでとりあえずやってみる」を思い出して、“チャレンジしてみる”気持ちを持ってトライすることができました。他のワークショップでは、もっとたくさんの“道”を同時にやってみることもあるそう。皆さんてんやわんやになりながら、ちょっとハードな(?)準備運動の時間でした…!

●前回からの続き、皆で話をしてみる・聞いてみる

全員で先週の最後にした、「日々の生活のこだわり」の話の振り返り。
湯たんぽの話、朝のテレビ、チラシの裏紙、箸置き、犬と話す旦那、こたつで座る場所、野菜を切る……全部で十数個の話を、別の人が「どんな話だった?こんな話だったかも?」と思い出しながら、自分の話として話してみました。
もともとは「旦那さんが自分とは話をしないのに、家の犬とならよく話す」というような話が、「旦那は動物に好かれやすくて、近所の犬と会ったときに犬と話が通じていたそう。…」というふうに、話す人によって話の中身が変化していく部分も大いにあり。


前回不参加だった3人の方も、今回で聞いた話を自分の話として話してみる、を体験してみました。散歩中の犬のうんちの話が、うんちを散歩中の斜面でする話や、山で拾って飼い始めた2匹の犬のトイレの話になっていったり…。
聞いている人から、気になることの質問もしていきます。「犬の名前は?」「犬の種類は?」……。

話す人にとっては普通の日常の話でも、聞いている人は十分に面白い話として興味を惹かれる部分があったり、質問のやり取りでも「そうなんだ~」「こう答えられると思わなかった!」など、意外性を感じてもっと面白い部分が出てきたりしました。

ここで一旦、休憩タイム……。

●2人でちょっとお芝居、を見てみる

今度は話す人・話を聞く人・見ている人を作って、話をする人と聞く人がちょっとお芝居をやる・それを見ている人が面白いところを探す、ということをやってみました。


まずは1組目。「家族が使う箸の中で、自分がお気に入りの箸の色がある。毎回その色を使うと自分のお気に入りだと気づかれてしまったら嫌で、たまに違う色の箸を使っている」という話を2回、講師からの指示を変えて、その変化を見てみました。

1回目の指示:「話を聞く人は、見ている人が面白いと思えるように聞く」
 (右側の話を聞く人は、相槌も頻繁にうち、リアクションも大きめ。)

指示を変えて2回目:「話す人は、さっきと同じように話をする。聞く人は、自分の手のささくれが気になりながらも、話は一応聞いている、という気持ちで聞いている」
(右側は話を聞く人、手のささくれが気になる。
左側は話をする人、話をしたくて、聞いてもらおうと話を続ける。)

1回目のときは、話を聞く人が話の内容に興味津々で、という空気でしたが、2回目のときには、少しおざなりな話の聞き方。それでも見ている人にとっては、2回目の方が話を聞いている人の様子に目が離せない・思わず笑ってしまう空気感がありました。

武居さんからは、「いま皆は、話をしている人よりも、話を聞いている人を見ていた。“お芝居”というと台詞を喋ることばかりに気がいっちゃうが、話を聞いている人が重要。……」とのこと。

2組目からは、話とは関係のないような設定をつけてやっていきました。見ている人は、そこでどんなことが生まれるのかを、面白がりながら見ていきます。

2組目:洗濯物の干し方の話をする。
+設定:大喧嘩していた親友に、喫茶店に呼び出された。話を聞く人は、相手が謝ってくるのかなと思っていたら……。

聞いている人はあまりリアクション・動作を取らなくていい、と言われて、何度かトライ。
「見ている人が想像してくれるから、やっている方は、どうやってもいい。見ている人が面白いところを発見してくれるから、やる人は無責任でいいし頑張らなくてよくて、その場に身を委ねたらいい」そうです。

3組目:犬と話すお父さんの話。
+設定:卒業式の日、男の子が校舎裏で「好きです、付き合ってください」と渾身の想いを伝えて頭を下げたあと、女の子からの返事は…。

1回目の後に、「お芝居のトーンにしようとしなくて、普段のトーンで話していい」とアドバイスを受け、再度トライ。設定は奇妙でも、2人の間の空気感はどんどんリアルに感じられるように変化していきました。

4組目:道路のひび割れの部分の歩き方の話。
+設定:病院の診察室で、医者が患者に向かって話をする。
(話をする人は、ただ話をしたいから話をする、という気持ちで、話をしてみる)

5組目:犬の散歩のときのうんちの話。
+設定:女性警察官が、職務質問で呼び止めた男性の手荷物検査をしている間に、話をし始める。

6組目:お箸の色にこだわりがある話。
+設定:プリキュアショーが終わって、着ぐるみの頭だけをとった休憩中のおじさんが座っている。そこに女の子が迷い込んできて、「見られた!」と思ったおじさんが、女の子に話を始める…。
(女の子の足の出し方や距離感が、何ともいえない絶妙なリアルさ)

ここで、休憩タイム……

●最後に、荒井さん作の戯曲が登場!

(先週のワークショップで出た話から荒井さんが見つけた“種”を、体感してみる時間)

先週のワークショップから発想して荒井さんが作った戯曲は、1対1の会話による戯曲の3部作です。
 ① 年配の2人がお喋りをしながら、お雛様を飾る準備をしている。
 ② ベンチに座っている人の前を、歩いて通り過ぎる人の会話。
 ③ 湖畔で若い2人が話をしている。  というシチュエーション。
台本のト書きは細川さんが読みつつ、それぞれの台本を渡された2人が読んでいきました。

(音読する2人は、お芝居をせずに目の前の人にしゃべりかける感じで話す、
相手の話を聞いて返していく…で読んでいきます)

話の内容やゲームの中で不意に起きたこと・出てきた言葉などが戯曲の中に入っていて、「そうそう、こういうことがあったな」「あの話のワードがここに入っているんだ!」など、皆で笑いながら面白がって、楽しい本読みの時間でした。

先週は不参加だった武居さんは、前日にこれを読んだときは、何の話かさっぱり分からなかったそう。でも、今日のワークショップの後に声で聞くと、すごく面白く感じたそうです。

細川さんは、「喋っている内容そのものだけでなく、2人で喋っているさらに奥に何があるのかを知ろうとしている時間がある。そういう、空気感のようなものを見ていけると面白いかな、というワークをやっていきたい。……」とのことでした。これで今日は終了。
明日は、皆でめちゃくちゃな話をしてみる・話の中から一部分を取って、そこから話を作ってみる、をやってみるそうです!
 

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\カメレオンのうらばなし/

第2週「お話を探そう」の1日目を振り返り、
講師の武居さん、細川さんにお話をうかがいました。
サポートCの五味さん(隊長!)、
ブログ担当スタッフの山内さん(参加者!)も参加して、
あれやこれやワイワイ語った「うらばなし」です。

 

 

――今日は、前半でほぐしていき、後半は「みんなの前でやってみる」ところに一気に進み、見ていてちょっと驚きました。

細川 距離が生まれる「さんづけ」の脳にならないように……とか、目を見る、触る、助け合いがうまれるっていうようなことをやって、あとは、前回いなかった方に改めて紹介をしがてら、次のステップまでいければいいな……というのが前半でした。

武居 驚いたのは、皆さんの話を聞いていると、先週聞いた話をそのまましているのかなっていうくらいナチュラルで、でも「全然ちがう」って。自分が失敗したり変になっちゃってもいいっていうふうに、これまでの時間でなっているんだなって感じました。だから、席の位置はみんなの前になったけど、さっき話したのとあんまり変わらないっていう状態で、「あ、じゃあやりますかー!」みたいなね。ふつうだったら「やだやだ」とか「わたし指さないで」とか起きるんですけど、「お、腰軽いな」っていう(笑)。

五味 そう、それって茅野の、市民館の特色なんですよ(笑)。

――で、前に出てお芝居をしてみた時に……

五味 お二人(武居さん・細川さん)が時々、目配せされていたじゃないですか。あれはやっぱり抑えどころというか……

武居 言葉にするとむずかしいんですけど、いわゆる、演技をしている「風(ふう)」というか。そっちにスイッチが入っちゃうと、やっていることの根本の意味が変わってきちゃうので、そういうのはピッ…て(目配せ)……

細川 (目配せ)今、ちがうよねって。

武居 もう一回やってもらおうかって。悪いことじゃないんですけど、今回のワークに関しては、そうじゃないところから丁寧にスタートしているので。「こういうつくりかたをするなら」っていうこだわりの部分というか。

細川 それこそシェイクスピアの時代のお芝居とかをするなら、「感じて」っていうよりまず「大きい声でしゃべろうか」ってなる。だけど今は、みなさんの日常のなかにある、ちょっとした心の動き、エンジンみたいなもの、ピッて動いたものを、しっかり注意深く見ていればおもしろいから。これってたぶん大きい劇場では通じない。けど、みんなで共有した話を、この距離でやるからできるっていうのがあるよなあって思っていて。演技ってことを先にやろうとしちゃうと飛ばしちゃいそうになるんだけど、そしたらもったいない時間になっちゃうから、飛ばさせないっていうのは、やっていましたかね。

五味 丁寧に繰り返していくっていうのが、いいなって思いました。やり直ししなければそのままだったかもしれないけど、やってみるとその違いが見えるから。

武居 そっちのほうがわかりやすいですよね。やっているほうは「え、これでいいんですか?」っていうほうが多いと思うんですけど。

細川 なんだかわからないけど、見ている人に笑いが起きたり、おもしろかったって言われて、そうなんだ……っていう。成功体験というか。

武居 それが気づき。ぼくらも最初そうだったから。

――やっているときは渦中にいるのでよくわからないけど、見る側になったとき「あ、たしかに!」って感じられる。渦中にいた人は、そんな感じでしたか?(山内・うんうんうなずく)
あと、話している側ががんばるんじゃなくて、見たり聞いたりしている側のほうが大事っていうのは、ずっとおっしゃっていますよね。


細川 演技のワークをやるとき、みんな割としゃべり方を練習するんですよね。自分たちもそうだったけど、どうやったらおもしろくしゃべれるか、このワードをここにもってきたほうが受けるぞ、とか。でも果たしてそれか?…って最近思っていて。

武居 話をちゃんと伝えていくっていうお芝居もあるし、おもしろいんですけど、ここでのつくりかたでは、空気というか、人と人の間で行われている“これ(人との間に円を描きながら)”をもっと大事にしていったほうが演劇になっていくと思うんです。

細川 その“これ”を、大きい劇場なんかでもしっかりできると、おもしろいですよね。どうやって増幅させていくかっていうのはテクニックなんですけど。

武居 大きいホールだと、遠くにいる人も同じ体験をするために、そういう技術で増幅をしなきゃいけないだろうけど。

細川 演技は結果を見ているから、技術のほうだけ真似しちゃう人は、その結果を真似するんですけど、その手前が絶対にある。その過程をしっかり体験してもらおうというのが今回で。でも、俳優になるためのワークではないので、こうやっておもしろがることで、日常にちょっと彩りがうまれればいいな、というか。そうそう、前回帰りに、荒井が「すっごいおもしろかったね、全員の話!」って大喜びしていたんです。そういう感性があれば、いろんなところがお芝居にも劇場にもなるだろうし、その最初の一歩になればいいなって。

――そう、前回みなさんから聞いた話をもとに、荒井さんが3つの台本を書いてくださって、最後はその本読みでした。読んでいる方がもともと持っている部分が素直に出ていて、ちょっとジーンとしちゃうというか……

武居 特に年配の方々の、その長年生きてきた、味のあるしゃべり方。演技しようってなるとそういうのが全部なくなって、みんな同じような言い方になっちゃうんだけど、それを残したままの本読みってなかなか聞けないから、いいなあーって。

細川 そうなんですよ。ぼく、高知でやっている市民参加型演劇でいつもそれを感じていて、いつも打ちひしがれるんです。ぼくらは一か月半かけて「その人」をつくるんですけど、市民には「その人」がもういるんですよね。だからあとは演劇的なパス回しだけを教えて、うそをつかずに今やっていることをちょっと増幅させていくっていうのを心がけてつくっているんです。

武居 ぼくも高知の舞台に出演させていただいたんですけど、もうね、勝てないんで、全力で技術で勝負してやりました!(一同笑) 最初、本読みを聞いて「あー、すげえなー。もうその人たちいるなー」って。こっちはゼロからだし、土台がちがう。もうここは技術でいくしかない!って(笑)、でも勝てなかったですね。

細川 で、その人たちが技術に憧れて「武居さんすごいー」って(笑)。でも市民の方にもよく言うんですけど、みなさんの生きてきた経験からの、市民がやるお芝居って、もっともっとすごいんだよなって感じているんです。

武居 ぼくが今日聞いた話や見たものって正直、去年見たお芝居とかよりおもしろかった。たぶん、残るんですよ。だから、来週の発表が終わって、数年後に「あんとき見たあれ覚えてるな」「あれおもしろかったな」って残っていたら…っていうのが、一番の希望ですね。頭のなかで増幅しちゃっているんでしょうけど、でも、それにかなう演劇ってなかなか出会えなかったりするから。

――ランポンさんたちは、そういういろんなところをすごくよく見つけて、気づいているんだなって、荒井さんの本を見て思いました。

武居 ひとりの人が何か思いついてくれるのを待っているんじゃ、できあがらないつくりかたをしているので。稽古で「全然つまんねえな」って思ってたけど、ぽろっとだれかが言ったひとことに「それだ!」ってことがあるから。

細川 言い間違いから一本できたよね。

武居 最後の最後に間違えて(笑)、「あー見つけたー!」って。

細川 つまんないことのほうが多いんですよ。だから明日は、今日みたいにおもしろくないと思います(笑)。でも大切なのは、おもしろいことを言うことじゃなくて、おもしろがる心。おもしろいものをみんなが見つけようとすることが、演劇をつくるうえでは一番大事かな、と。つまらない日常も、ちょっとしたことで素敵に見える瞬間がある。お芝居で、その機微みたいなものをたくさん詰め込むことができれば、とてもいいなって思います。


 

2025/03/02

2025/3/2 演劇WS「カメレオンのみつけかた」-第1週 はじめましての準備運動

★シアターランポンの演劇ワークショップ『シアターランポンのカメレオンのみつけかた』
第1週 はじめましての準備運動
日時:2025/3/2(日)13:30~16:30
会場:茅野市民館 アトリエ
講師:シアターランポン 細川貴司、草光純太、荒井正樹
参加者:17名
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いよいよ、3月の演劇ワークショップがスタート。
小学5年生や高校生~70代の方まで、幅広く参加者の皆さんにお集まりいただきました。
ちなみにご参加の皆さんは、年代もバラバラながら、演劇経験の有無も様々。
市民館によく来てくださる方や、今回が初めましての方もたくさんご参加くださって、全5回のワークショップがこれから進んでいきます。

●初回は、「はじめましての準備運動」!

サポートCの五味さんから、今週の3名の講師をご紹介いただいたあと、細川さんの挨拶でワークショップがスタート。3週にわたるワークショップの中で、講師の方々が毎週変わっていきます。

(今週の講師は、シアターランポンの細川さん・草光さん・荒井さん)

カメレオンのように日常の中に隠れている“演劇の種”を探していくワークショップの初回は、準備体操でたくさん遊びながら、心と体を柔らかくほぐしていきました。

● “大人のフルーツバスケット” からスタート

輪になって全員がイスに座った状態から、イスを1脚だけ外して、“大人のフルーツバスケット”からワークがスタートしました。
「茅野市内に住んでいる人」、「昨日の夜ご飯を覚えている人」、「朝パンを食べた人」、「猫が好きな人」、「雪が好きな人」、「推しがいる人」……などなど、


様々に質問を投げかけながら、皆さんお互いの雰囲気も何となく掴めたような感じ。
お互いの顔に少しずつ馴染み、体も少しほぐれてきて場の空気が砕けてきたところで、最初の準備体操が終了。


●みんなの名前を覚えるのも、ゲームで…?

お次は、全員の名前を一度に覚えてしまうゲームです。
1番最初の人から、「こっちゃん」・「まきまき」・「ゆみころ」・「ごん」…など、自分が呼ばれたい名前を言っていきますが、輪になって時計回りに座っている順に、どんどん覚える名前が増えていきます。
 ・最初の人が、自分の名前を言う
 →次の人は、最初の人の名前を復唱し、そのあとに自分の名前を付け足す
 →その次の人は、最初の人~自分の前の人までの名前を順に復唱し、最後に自分の名前を付け足す。


そんなふうに、自分の名前を付け足しながら次の人に順番を回していき、全員で反芻していくことで、いつのまにか最初から最後の人まで全員の名前を、全員がひとまずは覚えていました。

やってみる前は「人の顔と名前を覚えるのは無理だ~」と口々に言っていた方も、「無理だと思わないで、自分を信じてやってみる」という言葉を細川さんからいただき、とにかくチャレンジ!の気持ちに。誰かが名前が詰まってしまったときも、周りから「ま…?」と最初の文字の助け舟が出されたり、ときにはジェスチャーされたりしながら、全員で見事に達成しました!

●立って歩いて目線を合わせて、手を繋いで!

皆さんお互いの名前をなんとなく覚えられたら、次からは立って動くワーク。全員がワークショップエリアを自由に、バラバラに歩きます。

歩く行為を続けている内に、段々と細川さんより指示が増えていきます。

 ・きょろきょろせずに歩く、すれ違う人とは目線を合わせる。

 ・細川さんが太鼓を1つ鳴らすと、その場で止まる。
 ・太鼓を2つ鳴らすと、その後に続けて打たれた音の数の人数が集まり、グループを作って座る。

 →グループで座れたら… お互いに自己紹介をして全員で握手。

 →人数が集まらずにグループを作れなかったら… 全体に向かって自己紹介。


4人グループ、10人組グループを作る…など、いくつかゲームを繰り返しているうちに、最後は9人組のグループを作るよう指示が出ました。9人組のグループが2つちょうど出来上がり(参加者17名+講師の草光さん)、今度はそのチームでの対抗戦に移ります!

(写真奥側:チームうさちゃん🐇、手前側:チームひな祭り🎎)

●2チーム対抗、電流ゲーム

チーム全員で輪になって手を繋ぎ、スタートの人から手をぎゅっと握り、握られた感覚で次の人の手をまたぎゅっと握る…そういうように、手を握る感覚でぎゅっとを1周させたら「はい!」とチーム全員で手を挙げ、その終わりの早さを競います。

(まずは全員で1つの輪っかになって、お試し版)

初戦はチームうさちゃんが勝利! 毎ゲーム後には、それぞれのチームで作戦会議の時間を取ります。

(チームごとに小さく集まって、ひそひそ会議)

「手の握り方を変える?」「最後の手挙げも、手を繋いだままでしてみる?」…作戦会議で出たアイデアをあれやこれやと試してみるものの、合計5回戦ほどした間に、チームひな祭りが勝ったのは途中の1回のみ💦

(厳正なるジャッジは五味隊長!)

最後は、再度全員での「電流ゲーム」にトライ。最初は4秒台→最終的には2秒台まで縮める目標のもと、全員での作戦会議を繰り返します。
先程は2チームに分かれて出たアイデアを共有しながら、「感覚が早い、若い人にスタートをしてもらう」「目を瞑ってやってみる?」「お互いに距離を縮めて、輪を小さくしてやってみる」など数回トライし、最後のチャンスでとうとう目標の2秒台を成功することができました!  ここで、一旦休憩タイム……

●ちょっと変わった伝言ゲーム→ 無対象の物の伝言ゲーム?

先ほどのチームごとでワークを続けます。
1チームずつ交代で1列に並び、細川さんに宣言されたのは「無対象の物の伝言ゲーム」…? 物は無いけれど、その物があるようにジェスチャーで次の人に渡していくゲームです。

例えば、お題:りんご🍎 だとすると……
 → りんごそのものをジェスチャーで表すのではなく、りんごをかじってみたり、りんごの持ち方を工夫してみたりして、次の人が「何だろう…りんごかな?」と分かったら、りんごの受け渡しをする。そうして、また次の人に伝わるように、見えない物の受け渡しをしていく。

自分が物を受け渡される番までは、それまでの人がやっていた行為は全く見えないので、前の人の素振りだけを見て、何を渡されているのか?と想像して、次の人にどうやったらこの物が伝わる?と、真剣に考えてやっていきます。
どうしたら物を実際のように渡せるのか?やってみても、「分からなかったから、もう1回やって」と態度でお願いされたり、スムーズに渡せるときもありつつ、やっている方は、それはもう必死です……。

何を渡そうとしている…? 後から聞くと、”鎖になにかぶら下がっている物(?)”を渡したつもりが、干物を受け取って次の人に渡した、と!


上の写真は、「指輪、こういうふうにも渡せるよね」と細川さんよりアドバイスを受けている場面。最後の人まで行くと、何を渡されたと思ったのかを1人ずつ聞いていきます。
勘違いも含めて楽しい!「できるはずがなくて当たり前、困っている顔も含めて楽しみましょう」と細川さん。


最初から最後まで上手く伝わったのは、お題:赤ちゃん のとき。抱っこの仕方・床に寝かせておしめを替えてみたり、顔をみせてあやすような動きをしてみたり…。

必死にやりつつも、それを見ているもう1チームの側は、渡されるうちに変わったり変わらなかったりする物や、皆さんが必死に動作をしたりしている様子が、いい意味で面白くて仕方がない! 「あ、渡されている物が伝わらなくて、変わっていったな」「その持ち方をしたら、物が落ちちゃう!」「そうやって渡すのか~」「上手く伝わったね」など、見ているだけでも場の雰囲気が盛り上がり、たくさんリアクションが出てきます。


自分が見ているチームのときは、お題を考えた人以外は物の正体が分からないから、動きをよく見て考えながらも、ついつい面白くて笑っちゃうし、自分がやる方のチームのときは、順番待ちの間は他の人がやっていることは見えないのに他の人の笑い声だけ聞こえてくるから、「何が渡されてくる?」とそわそわしたり、時間があっという間に過ぎていきます。
「ひなあられ」「ラーメン(途中は蕎麦やスープに、最後はアイスクリームへ!)」「野球のグローブ(最後は指輪になりました)」などお題を変えていき、全員でゲームに熱中。

ゲームに熱中する中でも、「分からない物を渡され、とにかく分かろうとしている」「分からないと困っているのも面白い」「明確に、次の人に伝えようとすることをやっている」と細川さんが言った通りの心と体の状態まで、参加者全員がなっていっていました。
上手くいくから面白い、のではなくて、どんなふうに作っていこうかワークショップで考えたい、と言っていた細川さんの言葉が印象的でした。
そんなこんなのうちに、再び休憩タイムへ……

●最後に、来週に向けて! 「日々の生活のこだわりの話」

今度は全員で、また最初のように円を作ってイスに座りました。
「日々の生活のこだわりの話」をただ話していきます。
朝のお味噌汁の話、洗濯物の干し方・畳み方のこだわり、
通学路で道路のひびの部分の歩き方、家族で使うお箸の色・お箸置きの動物…。
ご自身からすると本当に何気ない・とりたてて面白くはない日常の部分が、聞いている周りの方からするとすごく興味を惹かれて、どんどん質問が重ねられていくことも。

(こだわりを話している内に話が広がったり、
周りの方からの質問で、どんどん聞いていて面白い部分が出てきたり…)

(質問しながら、なにやらすごく熱心にメモを取る講師の荒井さん)

そうして、最後には少しだけ、来週に繋がっていく部分を一度お試し。
話されていた“こだわり”を、違う人が自分のこだわりの話として、皆に語ってみます。
「メモを取る」というこだわりを別の人が話し、周りからも「どんな紙にメモをするのか?」「どんなサイズ?」と質問が重ねられて、どんどんとその人自身のこだわりとなっていきました。


終わったあと、自然に皆さんから拍手が起きました。
細川さんから最後に、「“淀みなく答えているから上手い” とかではなく、そのこだわりが “自分のものになっているから” 演じるのが上手く感じられる、人のものを自分のものにできている」 という話があり、初回のワークショップが終了。
…これが、来週のワークショップに繋がっていく、そうです!
 
 
 
 
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\カメレオンのうらばなし/

第1週「はじめましての準備運動」を振り返り、
細川さん・草光さん・荒井さんにお話をうかがいました

 

 

――今日のワークショップは「はじめましての準備運動」ということでしたが……

細川 前半は、仲良くなるときにぼくが大切にしていること、してほしいなということの「一歩先」を設定して、みんなにやってもらいました。

たとえば〈歩いてください〉のとき、ほんとにしてほしいのは「目を合わせる」ことや「意識を外に向ける」こと。〈名前をおぼえる〉で「できないってあきらめないで」っていったのも、やろうと思ったらもっと見るし、助けるから。〈電流〉も、早く回すことじゃなくて「ずっと手をつないでいること」がぼくの目標だったんです。どのワークも、与えられた課題をクリアする手前でいろいろ体験している。その時間を持つことで、小さなコミュニケーションの最初の段階がすごいスピードで行われているんですよね。

草光 ちがう目的を達成するために、まずは熱中しなきゃいけないんですけど、みなさん、目の前のことに熱中しだしたのが早かったですよね。そこに時間がかかるかどうかで中身が変わってくるんですけど、いろんなものがポンポン出てくるし、みんなで「あ、これなら話せるな」って状態になっていって。ジェスチャーゲームのときも、見られているんだけど、あまり変な緊張をせずに、熱中できていましたね。

――ジェスチャーの伝言ゲームは「受け取ったものを次の人に、表して渡していく」というのが新鮮でした。

細川 あのジェスチャーゲームは、全員うまくいったとしも「だから何?」なんです。でも、とまどったり、「え?」って思ったり、びっくりしたり、違うことを発想したなっていう瞬間を人は見て、「あー」ってなる。感動するってそういうことなんじゃないかな。最終的に、ぼくらは戯曲のなかであれをどう起こすか、っていうことが大切になるんですけどね。

――後半は、みなさんでお話をして、人の話を聞いて…という時間でした。

荒井 おもしろかったですよね。「なんだよそのこだわり!」って思うんですけど、だんだん話に夢中になってくる。知っている参加者さんがいて、いつも頑張っている姿を見ていたんですけど、話をして夢中になってくると、ほんとうに自然な姿で。あと、一番年下の子も、やっぱり最初は緊張するんだけど、最後しっかり話をしている姿を見た瞬間に「お!」って。やっぱり時間をかけているから。

細川 「つまんないことだと思ってたけど、人は笑うんだ」とか、「人の話っておもしろいね」とか、劇場を出たときにちょっと世界の見方が変わっているっていうのは、演劇と同じ役割だと思うんです。
今回のワークは、うまくやることではなくて、発見したことをみんなで共有する場をつくろうと思っていて。ジェスチャーゲームでもそうだけど、うまくできなくていいんです。「こだわり」の話をしているとき、「いつからですか?」って聞いたら「覚えてないなー」って言っていたじゃないですか。自分の話をしているときにはそれができる。「うまく言えない」っていうことができる。でも、それを面白おかしくやってやろう、演劇ってそういうもんでしょっていう、よくわからない欲が出てきてしまう。そこではないスタートを切ってみるというのが、今日の1日だったかな、と思います。

――ジェスチャーゲームのなかで「イメージがつながっている。それがあれば伝わっていくんじゃないか」っておっしゃっていたんですけど、前回の入門ワークショップの「話を聞いて、聞いたことから想像してみる」「そのなかにいる」っていうところと、つながっているように感じました。

細川 「感じたことを表現する」のではなくて、「感じた」ということを「ちゃんと伝える」というか。もう、そのままで十分、表現なんですよね。
で、「人の話」を「自分の話」として話すとき、「変わる」のはいいんですよ。おなじようにしなきゃいけないなら撮って流せばいい。でも演劇は、その「変わったところ」がふくらむところ。台本を読みこんだときにふくらんでくるのと同じこと。他人に渡すから、想像力が加わっていくんですよね。